28音 ページ30
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「……ッは…」
霞?
血の海に霞が倒れている。
だが…2日も血を流し続けられるか?
取り敢えず、五条先生に電話しよう。
……ワンコールで出やがった。
「恵〜?珍しいねぇ。どうしたの?」
「急いで霞の部屋に来てください」
「どしたの、そんなに慌てて」
「早くして下さい、もう手遅れかもしれないんです」
そして電話を切った数秒後。
「来たよ〜…って
これは……笑えないね」
先生の口角が下がる。
「これ、A……か?」
「恐らく」
神谷を刺してすぐに帰ったのは、このせいか?
いや、でもあのときは血なんて流れてなかったはずだ。
「僕さぁ、明里を助けにいく前にAに会ったんだけど……こんな血が流れるほど大怪我してる様子はなかったんだよね」
あの最強でも分からない。
「とにかく、硝子に見せよう」
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「死んでない」
家入さんは、そう言った。
死んでない?これだけ血を流しておいて?
「どういうことだ?硝子」
「恐らく、呪力だろうな。流れ出したのは大半が呪力で、血は見た目の半分も流れてないだろう」
「でも呪力は枯渇してないよな」
「あぁ。だが……いつ死んでも、おかしくはない」
「恵…どうする、知らせる?」
「分かりません」
どうすればいいか。
「……取り敢えず、目が覚めるまで医務室においてやって」
「当たり前だ」
「………思い出した」
突然先生が口を開いた。
「明里を医務室に運んだあと、Aから電話があったんだよね。
その時さ、【特級でしょ先生、私の演技は】って言ったんだ。
そんときはかなりイライラしてたから気に留めなかったけど、今となったら、その意味が分かる気がするよ」
「全て演技……ってことか?」
「あぁ。音痣術式の痣には、寿命があるんだ。多分Aは、自分の命があと僅かって知っていて、わざと皆を突き放すような態度を取ったんだ。
記憶喪失って名目で」
「俺たちがずっと騙されてたって言うんですか」
「落ち着け伏黒。確かにそういうことだが……お前たちを思っての行動だったんだろ」
唇を噛む。
「じゃあ、脚の傷は」
「明里がつけたものだろうな」
そん、な。
「神谷が…?証拠はあるんですか!?」
先生に詰め寄る。が、本人は表情を崩さない。
「明里を虐めていたのも、嫌われる為だな。
が、明里も何らかの理由でAを嫌われ者にしたかったんじゃないかな」
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作者名:しぐれ | 作成日時:2022年1月24日 21時