憧れは強く、美しく (2) ページ4
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一方、そんなAを側から見ているクラスメイト男子は、今日も頬を染めていた。
(観月さん、今日も美しい……)
(いつも何の話してるんだろ。俺も混ざりたい……)
と、このように。
夢中になって重たい愛のファンレターを書いているだけなのに、男子の中では神聖化されているのだ。……それは男子だけではないようだが。
「観月さん、今日も彼氏に手紙書いてるの?」
クラスメイト女子のひとりが、机に向かっているAに、背後から声をかけた。
すると彼女はパッと顔を上げ、女神のごとく柔らかい表情を見せる。その頬は、心なしか赤く染まっているようだ。
「ええ。あまり会えないから……ね?」
恥ずかしそうにはにかみながら漏らした、その言葉に。周囲の女子たちはみんな一斉に悲鳴をこぼす。「羨ましい!」やら「観月さん本当に美人!」やら、聞こえてくるのはみな肯定的な言葉だ。
そんな女子たちに構うこともなく、さっさと手紙を書くことに集中してしまったAに、冷たい視線を向ける人が一人。
「二重人格……性悪女……」
「世渡り上手って言ってくれない?」
“観月Aはアイドルオタク”という絶対の秘密を守り抜くため、彼女が考えた方法がこれだ。
放課後は毎日大好きな遠距離恋愛の彼氏にラブレターを書いている、という嘘をつくこと。それだけではいくら完璧美人でも単なる嫌味なので、作り出した“女神のような優しく美しい性格”も添えて。
完璧な演技に皆騙され、気づいた頃には『毎日彼氏に手紙を書く、一途な美人』というレッテルが彼女には貼られていた。
「本当、性格悪〜い」
「知ってる」
このことを唯一知っているユウでさえ、最初は本気で引いていた。この夢ノ咲学院普通科で、アイドルオタクなんて珍しくない。
それなのに、なぜそこまでして隠すのか。
「もしも朔間くんに会えたとき、アイドルに興味ない完璧美人のほうがオタクよりイメージ良いから」
そのために手紙も匿名にしてるしね、と零すA。そんな彼女に、ユウは光の無い目を向けた。
電子メールと違い、手紙は書いたら直接渡さなければならない。Aは満面の笑顔で手紙をバッグにしまい、席を立ったのだった。
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とわね(プロフ) - とても惹かれる作品です!更新頑張ってください! (2018年8月18日 16時) (レス) id: 1958dfbf36 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - ラムネを制する者さん» 本当だ……すごい間違いをしてしまいました。ごめんなさい。ご指摘ありがとうございます(^-^) (2018年8月10日 20時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
ラムネを制する者(プロフ) - すごく好みのお話で楽しく読ませてもらっています!吸血鬼が目覚める夜(3)の零さんの台詞の『ならぱ逃げなけれぱよい』なんですが『ならば逃げなければよい』なのでは?間違っていたらすいません! (2018年8月10日 18時) (レス) id: f868d1ea51 (このIDを非表示/違反報告)
リッコ(プロフ) - フラッペさん» お褒めの言葉、ありがとうございます!初作品ですが、“丁寧”を意識してこれからも頑張っていきたいと思います! (2018年8月10日 11時) (レス) id: d3767f5969 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - こういう細かな文章とても好きです。キャラ一つ一つの感情も伝わってきますし、かく現場も想像できていいですね。おじいちゃんの零先輩も俺の方の零先輩も大好きなので続きが気になります……♪ (2018年8月10日 10時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リッコ | 作成日時:2018年8月7日 17時