華の牙【朔間零】

始まりの日 〈前編〉 ページ29

Aside




【DDD】は無事終了した。

絶対的な実力を誇っていた生徒会……fineは、強豪との連戦を繰り広げ、最後には延長戦を辞退したことにより敗退。

勝負は、数々のユニットの力を借り、そして希望を与えた、Trickstarの勝利となった。



その翌週………………、







「それでは皆さん、今日集まってもらったのには理由があります。プロデュース科に新しい生徒がやってくるからです」



昔はアイドルだったらしい椚先生の一言で、私はステージ袖から出てくる。

少し変化した制服のデザイン、いつも通りの美しい容姿、そこに“女神のように優しく美しい性格”を添えれば……



「普通科から来ました、観月Aです。よろしくお願いします」



……第一印象は、完璧だ。





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「Aせんぱ〜いっっ！！」

「あんずちゃん、こんにちは」



講堂での自己紹介が終わると、満面の笑顔で近づいてくるあんずちゃん。私は彼女のハグを、完璧な営業スマイルで受け止めた。

しかし、笑っていられるのは表面だけ。内心は、今すぐにでも逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。



「嬢ちゃん」

「………………朔間、さん」



ニコッと笑った朔間くんに、私もニコッと笑い返す。こうなったのは、全部彼のせいなのだ。



「先日は本当にご迷惑をお掛けしました。お陰様ですっかり回復いたしました」

「そうか、それはよかったわい。我輩から見ても絶好調(・・・)じゃのう、その笑顔」

「………………」

「A先輩の体調が治ってよかったです！私も先輩の笑顔大好きですから！」

「………ありがとう、あんずちゃん」



あんずちゃんの前だというのに、思わず顔が引きつってしまうところだった。

彼は、確信犯だ。本性を知られたくない相手が目の前にいるのを知って、わざわざ際どいところに会話を持っていく。


この1週間、私は体験したことの無いような地獄(精神的に)を味わっていたのだ。





目を瞑り、静かに思い出す＿＿＿＿＿＿。






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