仕事_100 ページ4
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本丸の広大な敷地の、一角に建つ無人の
その屋根の上にたたずみ、ひのとは悠然と空を見上げていた。
奇妙に白っぽい、半透明の膜に覆われたような空だ。
この結界の外では雪が降ったのだろう。地面や屋根が白く彩られていた。
ひのとがいる側は雪が降っておらず、寒くない。
ひのと「…不思議な結界だなぁ」
結界の張り方を教えてくれた人のことは思い出せない。女だった気もするが、違うかもしれない。
だが今の彼にとって、そんなことはどうでもよかった。
ひのと「穏便に済ませよう、だなんて考えてた時もあったっけ」
クスクスと笑い、ひのとは地に降りた。
初めはただ乗っ取ろうと思っていた。彼らは自分を裏切ったけれど、それでも自らの手で顕現させた彼らに、情は残っていた。
だが実際、あの審神者と彼らの絆を目の当たりにして気が変わった。
元々自分のものなのに。さも家族のような顔をしている審神者が許せなくて。
しかし何をしても駄目だった。真名も毒も結界も、奇襲だって邪魔された。
…だったら、彼らにも手を出してしまえ。
ひのと「あいつらは俺を裏切ったんだ。先に悪いことをしたのは、あいつらだ」
歌うように呟いたひのとは、両腕を横に伸ばして、目を閉じる。
ひのと「__振るべ、振るべ、揺ら揺らと」
風が不自然に凪いだ。彼の声が、厳かに響き渡る。
ひのと「闇夜にとけ込む魂よ、影形なく、名すらなく」
何もなかったはずの地表に、黒い染みが生じた。
ひのと「
ふつりと、呪言が途絶えた。
地面に広がった黒影は大きく盛り上がる。その姿は一個の巨大な塊。
粘り気のある
だが、四肢があるわけではない。繊毛のような黒い触角に覆われた体を、腹這いのまま蠕動させて動く。
ひのと「っ…霊力使いすぎたかな」
少し息を切らしたひのとは、全長十丈はあろうかという化け物を見上げて、満足そうに笑った。
__人の体を食う妖が、黄泉の瘴気に取り込まれたことによって、魔物に転生したものだ。
ひのと「俺の命令に、従え__!」
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
※化け物がわかりづらいようでしたら、もの○け姫の祟り神の手足ないやつを想像して頂けると…
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作者名:葛の葉 | 作成日時:2018年12月16日 16時