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第45話 ページ45

ま「現実はそんなに甘くないし、臭いものには蓋をするような綺麗事だらけのフィクションはあんまり好きじゃない。」

パッと顔を上げるとまふさんは優しく笑って…少し寂しそうな、そんな顔をしていた。

そ「………Aちゃん、まふの曲って聴いたことある?」

『え?…あ、浦島坂田船に楽曲提供されているものなら…』

そ「じゃあまふやAtRの曲は聞いたことないんだ。」

そらるさんの言葉に頷くと、そらるさんは自身のスマホを弄りながらイヤホンを渡してくれた。

そ「聴いてみてよ。まふの曲。」

ま「えぇっ!?本人の前でっ!?」

そ「良いじゃん、生の感想聞くチャンスだし。聞きたいだろ?」

ま「うっ」

そらるさんが手渡してくれたイヤホンを両耳に挿すと同時に流れ出した音楽。

『っ、』



曲の解説なんて要らなかった。



だって、これは、この曲は。



私の気持ちを、そのまま叫んでくれていた。



ま「…何聴かせたんですか。」

そ「"ベルセルク"」

ま「…、」

そ「Aちゃんはさ、今まで誰も助けてくれなかったんだよ。ご両親も結局Aちゃんが命を断とうとする直前まで気付けなかった………いや、"気付かないフリ"をした。そして自分達じゃどうしようもないからうらたくんに預けた。」

ま「そらるさ、」

そ「悪く言いたくはないけど、Aちゃんの周りの大人達が見て見ぬふりをした結果がこれだよ。」



そ「声を上げて泣くことすら出来ない。」



大粒の涙を溢しながら、息がし辛くて変な呼吸を繰り返す私の頭をそらるさんがそっと撫でてくれて、その流れでイヤホンを外された。

そ「大丈夫?」

ま「ゆっくり息吐いて……そう、ゆっくりで良いからね。」





優しく笑う2人を見ていると温かい気持ちになれる。

それはきっと、私が長年欲していたもの───────「大丈夫」と笑ってくれる人が側にいるから、そして2人の関係を少しだけ羨ましく思うからだ。

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まなつ(プロフ) - コメント失礼します。ただ一人の私自身を思ってくれる、本当の私を見てくれる、そんな優しい誰かがすぐそばにいる、それを気付かせてくれる誰かがいる夢主ちゃんはとても幸せですね。素敵なお話をありがとうございます (2020年6月25日 23時) (レス) id: c0717d53d4 (このIDを非表示/違反報告)
ゲッティ - 奇遇、私も埼玉住んでる (2020年6月13日 18時) (レス) id: 0adc01732d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 心春さん» これは世界中で理不尽ないじめと戦う皆の話です。貴方の心に響いたのならきっと貴方も過去(現在かもしれませんが)経験がおありなのでしょう。「結局誰も助けてくれない、けれど何処かに助けてくれる大人は必ずいる」をテーマに書いておりますのでコメント嬉しいです。 (2020年5月26日 7時) (レス) id: 72c92659fa (このIDを非表示/違反報告)
心春 - 泣いてしまいました。夢主ちゃんの周りに素敵な方達がたくさん居て、読んでいてとてもあたたかくなりました。これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます。 (2020年5月26日 0時) (レス) id: dd23ca9c81 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - しおさん» ありがとうございます。「貴方にとって優しい世界が何処かにある」をテーマに書いておりますので伝わっていたのはとても嬉しいです。 (2020年5月24日 19時) (レス) id: 72c92659fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月6日 12時

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