姉と主治医の話

最終話　姉と主治医の話 ページ32

その日、聖都は歓喜に包まれた。

なんとクロノスがやられたおかげで消滅した人々が帰ってきたのである。

その結果、衛生省の仮面ライダークロニクルの回収も滞りなく進み、平和が訪れた。

CRの面々は医療の仕事に専念し、Mは研修医から晴れて小児科医になることが出来た。

前に坊っちゃん先生がMを呼ぶ時に

「研しゅ……んんっ、宝生！」

って言ってたのには少し笑った。

ちなみにそんな坊っちゃん先生には小姫が新しい助手として加わっている。

ゲンムは幻夢コーポレーションの社長に返り咲いた。
パラドとグラファイトも一緒について行ったけど、仲直りしたんだろうか。

そして、大我とA姉はというと。

「ただいま」

「おかえり、あなた」

「突然どうした？」

結婚した。

A姉は幻夢コーポレーションから独立した小星のおっさんが立ち上げた新しいゲーム会社でデザインをやっている。
この会社の初作品であるボーズ・オブ・テラは大ヒットだった。
私もファンの一人である。

大我は医師免許が返還されて、5年前のように放射線科医師として働いている。
闇医者の頃の経験を生かして、放射線科だけでなく他の科にも精通した貴重な医者になってるらしい。

私は今まで通り、天才ゲーマーNとして活動している。
前と変わったところがあるとするなら大我とA姉の二人と住んでるところくらいかな。

え？
新婚と一緒にいて気まずくないのかって？

そんなわけないじゃん。

大我は恋愛的にA姉を愛してるけど、私のことも構ってくれるもん。

A姉もそう。

私達は三人一組くらいでいいのだ。

もちろん、ちゃんと二人きりの時間も時々作ってあげてるけどね。

☆☆☆

実は、私には姉がいる。

その人は私が勝手に「お姉ちゃん」って呼んでいるだけで、血縁関係にあるわけじゃないけど。

それからもう一人、私には主治医がいる。

まぁこっちはそのままの意味だ。
説明の必要はない。

私と親密な仲のこの二人。

知り合いだったなんて、誰が思うだろう。

これは、私の姉と主治医の話。

仮の恋人からいろいろすっ飛ばして本当の夫婦になった、おかしな経路を辿った二人の話。

そして、私の長い話に飽きて寝てしまった、あんたの両親の話。

「随分と物騒な寝物語だな」

「いいじゃん。
桃太郎とか猿蟹合戦とか、昔話って物騒なの多いし」

遠くで、二人が笑う声がした。

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