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昔から人を見透かすことが案外得意だった。
ただ、そっと見つめるだけでなにか伝わる。
彼も同じ。私と同じだった。
「 A様、こんにちは。」
「 こんにちは。」
小さく震える体 私をじっと見つめる瞳はまさに煌の未来を見つめているかのように感じた。
すると、先程まで寝ていた女性が起き上がり、紅覇もとに駆け寄った。 紅覇は膝枕をして彼女を迎え入れていた。
「 紅覇、 」
名前を呼ぶと彼は目を見開き、私に諭すように言った。
「 いいえ、この子が紅覇で私が母親です。」
つたない言葉が流れ出てくる。きっと、彼ら親子にはこの城に居場所がなかったのだろう。
まだ幼い紅覇にはつらく寂しいものだっただろう。
母親が離れたのをみて私は紅覇を抱きしめた。
小さく潰れてしまいそうな体を自分の胸の中におさめ、語りかける。
「 貴方は練紅覇、練Aの弟。貴方が背負うのは煌の未来です。」
「 私には、そんな 力などありません。」
震えた声に私は彼の瞳をみつめ笑いかける。
「 なら、力をつけるのです。人は貪欲でなければだめなの。練家としての誇りをこれから身につけなさい。」
「 私にはあの子を守らないと!!」
声を張り上げ自分に言い聞かせる姿を見て、思わず体が震え上がるのを感じた。 まさにこの言葉を待っていたかのように。
「 そう、大切な人を守るために力をつけなさい。 練紅覇」
そう言うと、紅覇の目からは大きな粒が流れ落ちてきた。 一つ一つのことを噛み締めながら泣きじゃくった。
居場所がないなら私が見つける。 作る。
絶対、一人にはさせない。
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作者名:佑里 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ri0410saka1/
作成日時:2017年2月18日 23時