〝平和〟が一番似合わない町【名探偵コナン】 (ページ3)

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「やっほー、工藤！ってことで、くたばれ！」
「おわっ！？」

　私の投げた昼食の残りのあんぱんは、無駄に運動神経のいい工藤によって地面に落ちることなく回収された。「コレ、食っていいのか？」と訊かれたので、駄目だと答えたら食べられた。訊いた意味。
　あんぱんをかじった工藤のもとに、再び攻撃が仕掛けられた。地味に痛そうな、丸められた空手着が見事に工藤の後頭部にヒットしたのだ。頭を押さえて振り返った工藤は、虚を衝かれたような顔をしていた。

「なんだよおめーら。怒ってんのか？」
「工藤、君の顔を見たら無性に腹が立った。」
「べつにー……新一が活躍してる所為で、私のお父さんの仕事が減ってるからって、怒ってなんかいませんよー！」

　毛利少女はご立腹の様子。ベーッと舌を出した毛利に、空気の読めない工藤少年は、火に油を注ぐような発言をした。

「あれー？蘭の父さん、まだ探偵やってたのか？でも仕事が来ないのは、オレの所為じゃなくて、あの人の腕の所為………」
「莫迦。」

　私がそう呟いたのと、毛利が電柱を砕いたのとが同時だった。目の前を通過した拳が電柱を砕いたのを見て顔を青くする工藤。かく言う私も、毛利のパンチの威力に若干顔が引きつった。

「さ、さすが空手部女主将……」
「これさ、修理費とか請求されないよね？」

　地面に転がった電柱の破片を見て、思わず私と工藤は顔を見合わせる。彼女を怒らせてはいけないということを再び実感させられた時だった。
　少し歩き、店の建ち並ぶ大通りから様々な家の建つ住宅街に差し掛かったところで、私はふたりから離れた。ここからは彼らと帰り道が違うからである。

「Aー、バイバーイ！」
「うん、また来週。あ、そうだ。明日お土産買って来てね。」
「なんでオレがそんなこと」
「買って来てくれたら今度お弁当のから揚げ一個あげるからー。んじゃ、またね！」

　後ろから工藤の声が聞こえたが、多分気のせい。私はかなりご機嫌で家へと帰った。

　帰宅して開口一番、私は女子の欠片もないような声色で「は？」と呟いた。それほどまでに唖然としていたのだ。

「……なにやってんの、母さん。」
「あらおかえり。手洗ったら私の荷造り手伝ってくれない？」
「いや、なんで荷造り。なに、家出？」

　段ボールに衣類やら何やらを詰めている母さんにそう問えば、母さんは笑顔で爆弾発言をした。

「私達、今からアメリカに行って来るわね！」
「………は？」

　