〝平和〟が一番似合わない町【名探偵コナン】 (ページ2)

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　上履きから外履きに履き替えている毛利の肩を軽く叩き、悪戯っぽく耳元で囁く。

「もしかして、〝明日〟ってのは誰かさんとのデートのこと？」
「でで、デート！？そんな訳ないじゃない！誰があんな推理オタクと……」
「へぇー。男女ふたりだけでどっかに出掛けるってのは、そういうことじゃないの？」
「もう！からかわないでよA！」
「ごめんごめん。で、どこ行くの？」

　完熟トマト並に顔を真っ赤にしている毛利の横を通り過ぎ、自分の靴箱まで行く。「ごめ、ちょっと肩貸して」と毛利の肩に手を置いてスニーカーを履き、再び横に並んで昇降口から出る。

「行くのはトロピカルランド。勘違いしないでよ、明日のは私が空手の都大会で優勝したから連れてって貰うだけで……」
「あぁ、あの時の。鈴木がやけに張り切って応援してた時のか。」
「そう言うAだって、珍しく大声出してたじゃない。「頑張れ！」って。」
「…………嘘。マジ？」
「うん、マジ。」

　いや、そりゃ親友の大事な大会だし、一本取る度に興奮してたけど。恥ずかしくないって訳でもないげど……まぁ、優勝出来たからいっかな………。

　過ぎたことを考えていてもどうにもならないので、私は考えることを放棄した。
　いつの間にか校門を通過していたようで、舗装されたコンクリートを歩いている。駄菓子屋や雑貨屋を通り過ぎ、そろそろ本屋が見えて来るころだなぁ、と思い始めたところで、ふと見覚えのある背中が前を歩いているのに気が付いた。背中だけでも漂う気障さに思わずうえっ、と舌を出せば、毛利も気が付いたようで「あっ」を声を上げた。

「毛利。アイツに奇襲かけよう。」
「え？」
「なんか見てるとイライラする。」

　我ながら理不尽な理由だとは思う。

「ていうかアイツ、新聞で自分の記事見て、プラステレビで褒められて高笑いしてるし。オマケにあそこの女子中学生に噂されて余計に鼻高くなって――――え？毛利？」

　ふと、隣から凄い殺気を感じたので目を向ければ、かなりお怒りな様子の毛利がいた。自分の顔が、サーッと青くなっていくのが分かる。

「行くわよA！新一のヤツ、いっつもお父さんの仕事を取って……もう頭にきた！」
「えっ、ちょ、冗談だよ冗談！奇襲かけるって言ったのは冗談！あと、毛利の親父さんに仕事が来ないのは彼本人に問題があるんじゃ……」
「なんか言った？」
「ひぇっ。な、なんでもないです！」

　結論。女の恨みは恐ろしい。