バイト始めました ページ8
「お待たせ、伯父さん。」
ダイコク・プロダクションと言う、中堅の芸能事務所を経営している伯父、大黒篤志の会社へ訪れた。
「やっと来たね。」
「ごめん、何か向こうの先輩に絡まれて。」
黒崎先輩は、私のブラックリストに名前が乗った。
「変な喧嘩吹っ掛けちゃ駄目だと言ってるじゃないか。」
「違う、私吹っ掛けられた方!アイアム被害者だわこんちくしょう。」
何でもかんでも私が喧嘩吹っ掛けてるみたいな言い方はやめてくれ、と口を尖らす。
「ああ、ごめんごめん、Aはおばぁちゃんと似て短気だから。」
そう言って苦笑を浮かべる伯父さんだが、全然フォローになっていない。
「さ、もう皆来ているよ。」
「ああ、はーい。」
伯父さんに年甲斐もなく手を引かれ、大人しく連行される。
やってきたのは事務所にある社長室。
ひょっこりと顔を出すと、其処にはまたもや何人かのイケメンと綺麗な女性。
今日のイケメン遭遇率と美少女遭遇率は最高値である。
「あれ、その可愛い子は?」
下睫毛が長い、さっきの神宮寺さんと同等な雰囲気の男の子が、伯父さんの後ろに隠れていた私の存在に気付いた。
「この子は柏木 A、僕と修二の姪ッ子だよ。」
「柏木 Aです。お忙しいA&Rさんのお手伝いとして来ました。」
B-PROJECTと言って、業界大手のレコード会社、ガンダーラミュージックが手掛ける男性アイドルプロジェクトに選ばれたスペシャルユニット「キタコレ」・「THRIVE」・「MooNs」「KiLLER KiNG」の4ユニットが伯父さんの事務所に在籍している。
そこで彼等のA&Rとして働いているさっきの綺麗な女性を手伝うアルバイトとして、私は呼ばれた。
忙しいのは此方も同じだが学費を稼ぐため、伯父さんに頼まれて手伝いと言う名の雑用バイトをすることになったのだ。
因みにA&Rとはレコード会社の立場でアーティストの育成、音楽制作、宣伝企画、そしてときにはマネージャーのような業務も担当する職務をする人の事である。
「そういうわけだ、皆頼んだぜ。」
篤志伯父さんの弟で、ブレイブ・エンタテインメントと言う新興の芸能事務所を経営している大黒修二伯父さんが、相も変わらず上から目線でそう告げた。
「頼まれたのはこっちなんだけどねー。」
皆、私が他の場所でアルバイトするよりも給料を弾ませるからうちで働いてくれ、と伯父さんが2人して私に頭を下げてまで頼み込んできた事等、思ってもいないだろう。
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年5月29日 10時