誘惑欲張りJEWELRY 『1』 (ページ14)

今日:3 hit、昨日:25 hit、合計:209,167 hit

5倍増しページ14

「あ、風斗君出てる。」

　未だに頭を押さえて痛がる椿君を他所に梓君と並んでソファに座り、仲良くTV鑑賞中。

　何か面白いアニメでもドラマでも、何でも良いからやっていないかな、とチャンネルを変えていた。すると、此の朝日奈家の十二男、今人気のアイドルグループ「forttê」の一員、風斗君が、アイドルらしく活動している場面が映った。

　家では生意気で、常に上から目線な子だが、アイドルとしてカメラが向くと途端に爽やか且つ可愛らしい笑顔を浮かべるのだ。
　
　只、アイドルとして歌を歌うよりも、演技の方に興味があるらしく、俳優としての仕事の方に力を注いでいる様だ。

　お芝居をやりたいと言っているだけあって、芸能界でも高い評価を得ていると聞いた。

　恵まれた容姿に、サラリと何でもやってのける天才肌。そして好きな事に関して努力出来る姿勢。芸能界でもそこそこ成功できている彼を見て―――

「なんか腹立つ。」

私は大変恨めしく思った。そして、彼の笑顔に苛立ちを覚え、直ぐ様番組を変える。

　風斗君が聞いたら、絶対怒るだろうな。

「何でこの僕が出てるのに変えたわけ？」

こんな風に………あれ？

「帰ってたの？！」

　エントランスから、ひょっこりと顔を出したのは、TVに出ていた天使みたいな風斗君ではなく、ご立腹状態の生意気な風斗君だった。

　驚き、勢いよく立ち上がったせいで、ガゴッと鈍い音を立て、足の脛をテーブルにぶつける。

　ジンジンと痛む脛を涙目で押さえると、風斗君が鼻で笑ってきた。

　それ、さっきの5倍増しで腹立つからやめてくれ。