状況 ページ13
「あー、つまんない!」
私の再従兄弟にあたる14人の兄妹が住むマンション、「サンライズ・レジデンス」へと帰宅。高校に入ったと同時に此処へ居候させてもらっているのだ。
5階のリビングへと足を運び、鞄をソファに放り投げて、自分も鞄と同じようにソファに寝転ぶ。
澄空さんにも七海先輩にも、メイクを施さずに帰ってきてしまった。
あんな天使と言っても過言ではない女性が、2人も居たと言うのに私は何も出来なかった。
それが只、悔しくてならない。
明日こそは、澄空さんは兎も角として七海先輩だけでもメイクアップしたい。
そんな小さくも私にとってはスケールの大きい目標を掲げ、だらしなくソファでTVを見る。
今は午後9時、リビングには誰も居ない。
お風呂かな、と考えつつボッチな時間を堪能していると―――
「あれ、A帰ってきてたのか! おかえりー!」
銀髪の独特な髪と、目元の泣き黒子が特徴、五男、今をトキメク若手イケメン声優の椿君が御登場。
一番五月蝿いのが来ちゃったよ。
気に入った人物に必ず抱きつく癖があるのか、此方に向かって飛び付こうとしてきた彼を華麗に避ける。
「あ、Aお帰り。」
避けたと同時に六男、椿君の双子の弟で此方も声優、梓君がやって来た。しかも、2人共風呂上がりで、熱気が漂ってくるのだ。
「A冷てーっ!」
「ぐえっ!」
梓君が来て、気が緩んだ隙を突かれてしまった。
思いっきり椿君に抱き締められる。力が強いから、絞め殺されるかと思ったではないか。
「相変わらずの低体温! 暑い時の風呂上がりはやっぱ、A抱きしめると冷える。」
やめて、こっちは熱い。
どうにか椿君から離れようと、身を捩るも如何せん、力が男女の大きな差で、彼の方が圧倒的に強い。だから、簡単に抜け出せないのだ。
余りにも離れなかったら、鳩尾1発決めて逃げよう。
そう思った瞬間―――
ゴンッ
鈍い音と共に椿君の腕の力が緩み、見事脱出成功。
見ると椿君は涙目で頭を押さえていて、梓君は爽やか且つ真っ黒な笑顔で拳を作っていた。
嗚呼、殴られたのか。
私はいち早く、事態の状況を察した。
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年5月29日 10時