作曲家の血 ページ36
「柏木さん、あれは?」
神無月さんが、隼さんの手中にあるUSBについて聞いてきた。
「私が作曲担当しているアイドルグループの新曲案が入ったUSBです。」
「え、それ大丈夫?!」
「まあ、今日没にされたやつなんで聞いても問題無いと思いますよ。」
一通り説明しながら、今日の出来事を思い出す。黒崎先輩とのやり取りは、思い出すだけで頭痛がする。
隼さんはそんな私達の会話を気にすることなく、何処からともなく取り出したパソコンにUSBを挿し込みイヤホンを耳に当てる。そして魔王様ワールド全開な中、更に自分の世界へとのめり込んだ。
相も変わらずマイペースな人である。
「顔色悪いけど大丈夫か?」
「ああ、葉月さん。否、ちょっと曲の件で其のグループと揉めまして、頭が痛い次第です。まあ、揉めるのは日常茶飯事なんで大丈夫ですが。」
「喧嘩したの?」
純粋な、穢れの無い瞳で此方の顔色を伺う水無月さんの何と優しいことか。
「売られた喧嘩を買った、と言うヤツです。」
「なかなか短気なんだな、柏木さん!」
ハッハッハッー、と豪快に笑い飛ばしてくれる文月さんに少し心が救われた。
「そんな、照れちゃいます。」
「照れるとこか?!」
「冗談です。」
葉月さん、的確なツッコミをありがとうございます。貴方が居るお陰で、安心してふざけられる。
隼さんが私の曲を聞いている中、此方は此方でわいわい騒ぐ。そんな何気無い時間が楽しくて仕方がない。
天然な神無月さんと水無月さん、チャラそうに見えて実は一番まともな葉月さん。皆を優しく見守る長月さんに文月さん、そしてそんな皆さんを纏めているのは他でもなく隼さんだ。一人一人の個性が合わさって、アイドルとして光り輝く。
それはまるで、一つの曲の様に――――――
「はッ!」
突然私の頭の中に舞い降りてきたのは、メロディーの数々。今なら良い曲が作れるかもしれないと、私はおもむろに鞄の中から五線紙とシャープペンシルを取り出した。
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年5月29日 10時