女子力担当 ページ34
「ゆっくり此所でお茶をしてから曲を作れば良いよ。なんなら、今日は皆と喋って仲を深めるだけでも充分だ。」
隼さんの魔王らしく不敵な笑みに圧倒され、バイトも無いからと御言葉に甘えゆっくりさせてもらうことにした。
大分慣れてきた私は作曲の参考にと普段、ステージの上だけでは見ることの出来ない、何気無い日常での皆の様子を文月さんに教えてもった。
「涙、俺もヤマト触って良い?」
文月さんによると、神無月さんは同年で相方である水無月さんともっと仲良くなりたいと奮闘中。
今ももっと交流を深めようと水無月さんへ話しかけている。歳上ながら、何とも微笑ましい事この上無い光景だ。
クスリと思わず笑みが溢れる。
「良かったら皆の写真があるよ。見る?」
さっきと何ら変わらない、優しい微笑みを浮かべスマホのアルバムを開ける長月さん。どうやら可愛いものや動物が大好きでよく写真を撮っている様だ。
「あ、此処のお店行ったことあります。」
幾つもの写真を見ていくなかで、ふと目に止まったのはと或る雑貨店。
此処のアンティーク調の小物がお洒落で可愛いと、最近の若い女の子達に人気である。
「可愛いよね、此処のお店。よく行くの?」
「あ、いえ、ちょっと洒落たソーイングセットが欲しくて、偶々入ったのが此のお店だっただけです。」
適当に入ったお店だった。中に入った時、西洋の小さな家を思い浮かばせるような内装と圧倒的女性客の多さに驚いた。
何時も百均で色々必要なものを買い揃える自分にとっては、ハードルが高い御店であったのをよく覚えている。そんなお店を知っているなんて、流石長月さん。
女子力に関して、この人以上に見習うべき存在は居ないのではないかと考えてしまう。
「そうなんだ。何か作ったりするの?」
「よく洋服を………」
「え、凄い! 写真とかある?見てみたいな。」
器用でお裁縫も得意な長月さんに見せるとなると抵抗がある。だが、こんなにもキラキラと目を輝かせられたら断るに断れない。
「ど、どうぞ。」
恐る恐るスマホに電源を入れ、フォトフォルダを開き彼に渡す。
黒を基準としたゴスロリワンピースに、桃色をベースに白のフリルをあしらった甘ロリワンピース。自信作は何処か昭和の懐かしさを感じさせる様なレトロワンピースだ。
「これを柏木さんが?!」
「ええ、まあ。」
「凄い!此れならお店が出せるよ!」
長月さんの御世辞とは程遠い、素直な感想に照れてしまった。
211人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年5月29日 10時