【氷室辰也】Amur adonis

Everlasting happiness twenty-one ページ23

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お世辞にも豪華とは言えない小さなチャペル。


牧師さんの言葉に頷き、指輪をはめて誓いのキスを交わす。


ありふれた、王道少女漫画の最終回のよう。




私たちの出逢いは、とてもロマンチックと言える様なものではなくて。




高校生活も残り僅かで、

『この3年間も何事もなく平和に終わる』

そう思っていた時、突然現れた運命の人。




小さな頃からお伽話のシンデレラに憧れていた。
だけど私の家は特にドラマもない母子家庭、王子様なんて現れない。




だけど、高校生になっても憧れは変わらなかった。




そんな私の前に突然現れた彼は学年だけでなく、生徒全員が知っているような有名人で。





そんな彼との初めましては、


私にとっての『可愛い後輩くん』で、

彼にとっての『初恋の人』だった。





私に一目惚れをした、と言っていたけれど、今思えば、それはきっと私も同じだったのだろう。




初めて話しかけてくれた時、
運命の彼に出会った時、
可愛い後輩である彼の笑顔に惚れてしまった。




その時の笑顔は、今でも思い出す。





「A？ 皆が待っているよ？」




『あ、うん！』





ふと我にかえる。



不思議そうな顔を浮かべる辰也くんに、「ごめんごめん」と軽く謝り、差し出された手を握り返す。






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