1-1 Coming of butterfly ページ3
「うーん、今日も平和ーっ」
「ルーシィ、そろそろ仕事行かないと家賃まずいんじゃないの？」
「ミラさん…そうなんですけど…」
いい仕事が見つからなくって…とあたしは続ける。
ここは、【妖精の尻尾】、仕事の仲介場、魔導師ギルドだ。
その中の賑やかなボロ酒場、さらにその奥のカウンターにて、あたしはテーブルに突っ伏していた。
あたしとカウンターを挟んで微笑む、先程から話している女性、ミラジェーン。
元S級魔導士だか、何かとあって今は従業員をしている。
おっと、話が逸れた。
…とにかく、今日もあたしは金欠で、仕事を探しているのだ。
「ルーシィが出来て、家賃も払えるぐらいのちょうどいい仕事ねぇ…あら？」
「ミラさん？どうしたんですか？」
「どうやらルーシィ、今日は仕事できなさそうね」
ミラさんの目線はあたしの背後に。
首を傾げるあたしに、背後から声が掛かった。
「ルーシィ、頼みがあるのだが」
「ん？…あっ、エルザ！」
そこには美しい緋色の髪を靡かせたエルザの姿があった。そして、その目からはキラキラと、輝きが放たれている。
これは…何か面倒くさいことに巻き込まれる予感！
「実はだな、ギルドの近くに異国の料理を出すレストランが出来たらしいんだ！私と一緒に来てくれないかと思ってな」
「そ、そうね…」
「そうか、来てくれるか！では早速行くぞ！」
「えっ、ちょ、まだ行くって言ってな…きゃあ！」
ズルズルと引きずられて行くあたし。
「助けて〜っ！」
「ルーシィ、エルザ、行ってらっしゃい♪」
私の言葉も虚しく、にこやかに手を振るミラさん。
そして、なおも目をキラキラさせて、私を引きずるエルザ。
…どうやら、私は拒否権がないらしい。
「…もう、しょうがないんだから」
そうは言ったものの、心は沈んではおらず、寧ろ晴れ晴れとしていた。
また今日も、面白いことが始まるのだ。
そう考えると、ちょっとニヤッとしてしまう。
…そうこうして、あたし達はギルドを出たのだった。
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作者名：れーな | 作成日時：2014年7月20日 23時
