イロコイ・ライン【ars K.N】 (ページ6)

今日:6 hit、昨日:16 hit、合計:2,716,213 hit

6.どうしよう。ページ6

「......やった...！」

運命の神様が、これまで私に冷たかったのは最後にでっかいプレゼントをくれる為だったんだ。
ツンデレだったんだ！
最後に最高のデレを見せてくれた！

三年生になった私は、やっと、やっと、二宮先生のクラスになれた。

これまで授業すら持って貰えなかったのに、一気に担任！
進路指導も二宮先生。
『先生のクラスの生徒』ってゆー正当な理由で、進路相談に乗って貰えるんだ。

「このクラスの担任、します。二宮です」

教壇に立った二宮先生が、片方の口角をキュっと上げる。

それ。その表情が、どこか意地悪そうで好き。

「ま、知ってると思うけど一応」

先生がクルっと背中を向け、黒板に『二宮和也』と書いた。

「カズヤ、じゃなくてカズナリね。ニノミヤー、カズナリ」

『和也』って書いてる時に、大きくは無いのによく通る声で言った。

「一年間よろしく。受験もあるコトだし、必死に頑張りましょ」

先生の言葉に、皆一気に現実を思い出したようにウワー...と悲しげな声を出しながら項垂れる。

「お前らさ」

ククっと笑って「いつしんどい想いするか、ってだけの話よ？」って、先生は首を傾げた。

「受験生の今頑張って、希望する進路に進むか。今サボって、理想としてた大人になれなかった時に『あの時頑張れば...』って後悔するか。どっちの人生が良いんだ、ってコト」

教室が、シンと静まる。

「オレは高校時代に後悔があったから、これ以上後悔したくなくって頑張ったけどね」

誰かが「何で後悔したんですかー？」って訊いた。

先生は「ナイショ」って、人差し指を唇の前に立てて微笑んだ。

...なに、今の...。

アイドルみたいだったんだけど！？
キラーンって音が聴こえたんだけど！？

どうしよう。先生って担任を持ってるクラスではちょっと可愛い所を見せちゃったりするの？
どうしよう。みんな、先生の事を好きになっちゃうかも...ライバル何人いるの？
どうしよう。私...一年間、心臓持つの？

もう既に、死にそうな位にドキドキしてるのに。

私、ちゃんと生きてられるの？

「じゃ、出席とりまーす。呼ばれたら手を挙げ、大きな声でお返事しましょ」

幼稚園児に向けるような可愛い言い方に、またドキドキ。

「あ、簡単な自己紹介もしてよ。そうだなー...好きなモンでも教えて？食いモンでもアイドルでも良いから」

先生はそう言うと教壇から降り、窓側一番前の席の子の肩に触れて「君から」って微笑んだ。