イロコイ・ライン【ars K.N】 (ページ31)

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31.私まだ。ページ31

翌日は休んだけど、幸い週末を挟んだから私は一日だけの欠席で済んだ。

月曜日、朝のホームルームで先生はやっぱり私の席をまず確認してくれた。

それだけで、まだ胸がギュウ...っとなる。

もう、望みなんて無いのに。

『生徒』を恋愛対象として、見てくれない人なのに。

この想いは、いつまで私を縛るんだろう。

こんなに苦しいのに本気だと思って貰えない想いなんて、早く忘れてしまいたいのに。

先生は、それからもやっぱり変わらなくて

他の生徒と同じように、私にも接してくれる。

だけど、『秘書』としてのお手伝いは頼まれなくなった。

私がしてたお手伝いは日直が命じられるようになって、でも本来はそれが普通な事だから誰も気にしてないみたい。
ただ私一人だけが、その事を気にして、勝手に傷付いてた。

・

受験の季節がやって来て

私にも、その日がやって来て

先生は「頑張れよ」と、笑ってくれた。

でも私の後に先生が声を掛けた子とは、拳同士をコツンと合わせたりしてて

どうして私とはしてくれないの...？って思ったら悲しくて、悔しくて

悔しいから、絶対に合格して先生に褒めて貰いたいって思った。

私はまだ未練たらしく、先生に褒められたいし

褒められる為に、合格したいって思ってる。

こんなコト考えてるってバレたら、きっと先生は怒るね。
そんな気持ちで受験すんなって。

ごめんなさい。

だけど、私の世界は先生だけなんです。

ごめんなさい。

私まだ、先生が好きなんです。

結果から言えば、私は東山大学に合格する事が出来た。

それを先生に報告しに行った時、私の他にも結果を報告しに来てる生徒がたくさん居て

職員室の前に出て来てる先生にその子達みんなが報告し終わるのを、私はちょっと離れた所でずっと待ってた。

嬉しそうな表情の女子の頭を、先生が優しく撫でる。
ホっとした表情の男子の頭を、先生がグシャグシャって撫でる。

そんな様子を見てるのは、ほんの少し...辛かった。

みんなの報告を聞き終えた先生が、チラっとこっちを見る。

「そんなトコで何してんのよ」
「...待ってたんです」
「ンフフ、何それ」

スリッパをパコパコ鳴らして、先生が壁に凭れてる私の前まで歩いて来た。

「さて。結城さんの結果はどうでしたか？」
「......」
「...ん？」

唇をギュっと噛むと、先生は小さく口を開き眉間に皺を寄せた。

もしかして、心配してくれてる？

そう思っただけで、泣きそうだった。