かつて死んだ彼女の名前【鬼滅の刃】

弐 ページ14

｢....こ、こんにちは｣


『はい。こんにちは』


全くわからない。
匂いが全くしないんだ。誰だって...鬼だって匂いはする。

なのに彼女は匂いがしなかった。


『私、四月一日Aと言います。あなた方の容態を見に来ました』


透き通った音色の声。
とても綺麗な....安らかな音色。


｢えっと...竈門炭治郎です｣


『竈門さん。あなた、顎、足がまだ治ってませんね..待って下さいね』


蟲柱さんに似ている...だけど、少し違うような。

四月一日さんは黒いカバンから小瓶の透明な液体を出した。

渡された液体を飲んでみると顎も足も楽になっていた。


『完治..とはいいませんが、少しは楽になりましたか?』


｢はい!ありがとうございます!｣


これで訓練により集中できる!
でも、この人は誰なんだろう...鬼殺隊でも隠でもなさそう。


『では、他の方も見てみましょうか』


と言って四月一日さんは善逸たちのところに向かい。
俺も後を追いかけていった。


｢いやああああ!!!｣


汚い雄声が聞こえる。
それは善逸のものだった。

また騒いでるのかと炭治郎は申し訳なさでいっぱいになった。

行ってみるとやっぱり善逸が薬を飲むのを嫌がっていた。


｢いやだあああああ!!飲みたくなああい!!｣


ベットでジタバタしてきよを困らせていた。

炭治郎が止めようとすると、四月一日が善逸に近寄った。


『こんにちは。あなたが善逸さんですね』


その声にすぐピタッと声が止まった。

彼女はまたカバンから薬を取り出す。


『これで少しは。だけど、飲まないと治りませよ?』


｢わかりましたー!!お姉さんのお名前聞いていいですか?｣


『はい。四月一日です』


｢四月一日さんですねー!｣


元気よくデレデレしながら善逸は答える。
相変わらず四月一日は淡々としている。
あまり興味のなさそうに。

それから彼女は炭治郎に向き直る。
とても不思議な雰囲気がある。


『あなたは...鬼を連れていますか？』


｢なぜ...柱から聞きましたか？｣


『いえ。ただ、鬼の気配がしたので』


そう言うと彼は頷き話した。

鬼舞辻無惨に襲われ家族を失ったこと、そのせいで妹を鬼にされたこと、鬼にされた妹を治すために鬼殺隊にはいったことを。


────────鬼舞辻無惨。


名前だけしか聞いたことがない鬼の大将。
一体どんな奴なんだろうか。

長く艶やかな黒髪に端正な顔立ち、大きな白い菊のある着物。

妙に鮮明な情報を覚えていることに彼女は気づいていなかった。

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