【東京喰種】月山の彼女は半喰種になったようで。

悪食１４ ページ15

月山side



雨が降ってきた。



既に指定された時間だがAの姿はない。



月「……A」



傘…持って来ればよかった。



すると急に視界は暗くなり雨も止んだ。



月「ん？」



上を見上げると薄い緑の傘。



横に香水の匂いを際どく漂わせる女がいた。



女「遊ばない？」



月「いや…残念だが待ち人がいるんだ」



女「そう？」



月「…全然来る様子はないけどね」



女「なら…」



と女は馴れ馴れしく僕の頬に手を置いた。



なんとも気持ち悪い気分だ。



…重なりそうな唇。



勝手にしろ、蹴るなり殴るなりしてやる。



女「綺麗な顔立ちね…ふふっ…」



女はその唇を重ねようと瞳を閉じた。



貴「月山…なの？」



愛しい澄んだ声。



僕はすぐさま離れた。



月「っ！？」



目の前には泣きそうなほど瞳を潤ませ、



雨に打たれているAがいた。



貴「え…と、お邪魔しましたっ…」



逃げる様に踵を返し人混みに消えていこうとするA。



誘惑してきた女はもういなかった。



月「待ってくれ！」



Aを後ろからぎゅうっと抱きすくめた。



貴「ち、違うの…私はタタラと…それで。



見るつもりはなかったの！」



月「誤解だ、



…あいつじゃなくて僕と待ち合わせだ」



貴「え？」



その返答にゆっくり振り返るA。



月「今回のこと…もう忘れよう。



そして君を…もう一度彼女として迎えたい」



貴「忘れ……る？」



月「…振り返ったらきっと苦しんで、



また離れてしまうと思うんだ。



そんなの嫌なんだ…っ」



貴「月…山」



月「お願いだ、そばに居てくれ。



ずっと僕の隣に居てくれ…」



大の男がびしょ濡れで泣き喚いてる。



Aだって呆れるだろう。



貴「…」



月「離れないで…」



貴「…」



月「そばに「良いよ」……え」



Aは手を差し出した。



貴「帰ろ？月山」



月「…っ…」



僕は迷いなくその手を握り指を絡ませた。



貴「明日にでもあんていく行こうね」



月「ああ、その後に二人で買い物でもしよう」



貴「良いよ…あ、新しい服買いに行きたい！」



月「ふふっ…そうしようか」








その後ろ姿を見守る白髪の男。



タ「エト…頼む」



エ「本当にいいの？記憶を消すなんて…」



タ「あれがAの幸せだ」



そうして涙が地面に滴り落ちた。



タ「Aっ…



俺はまだお前のこと………っ



──だからっ…」

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