食べたくない 7 (雅) ページ42
智Side
結局入院してからも雅紀は食事を取ってくれなくて、
僕らはやむなく最終手段をとることにした。
仕事終わりに翔も来てくれて、
話し合いの結果、胃に直接管を入れることにしたんだ。
本当はさけたい処置だったけど、
これ以上待つことはできない。
そうは思っても、
寝ている雅紀の横でチューブを用意している翔を見ていると、
悔しい気持ちになってくる。
こうなる前に、なんとかできなかったのかなって。
翔も辛いんだろうけど、そんな顔は見せずに、
しっかり医者として雅紀に向き合ってくれてる。
強いお兄ちゃんだよ、翔は。
翔「まさき。まーさき。」
雅「ん・・・しょ・・に・・・」
翔「おはよう。」
準備を終えた翔が、雅紀の肩を優しく叩く。
処置を行う前に、雅紀に説明しておかないと。
寝ているうちに不意打ちするのは嫌だから。
翔「これ入れたら、身体も楽になるんだよ。
ご飯が食べられるようになるまで、
これで栄養送ってあげよう。
ずっとこのままなのは辛いだろ?」
雅「んっ・・・やだ・・・いたいっ」
翔「すこ〜しだけ。
すぐに終わるんだよ?
ちょっと頑張ったらおしまい。」
嫌だ、怖い、って弱々しく泣いている雅紀を
翔が優しくなだめているのを、
僕は少し離れたところから見ていた。
今回は翔に任せておけば大丈夫でしょう。
ここ数日の雅紀は頭が働かないのかボーっとしていることが多いし、
いっぺんに2人でしゃべるよりは、
翔の声だけの方が言葉も届きやすいだろうから。
雅「んっ、うっ・・こわっ・・・」
翔「ん〜? 怖くないんだよ?
ほら、智にぃもいるし。
すぐに終わっちゃうって言ったろ?」
雅「こわ・・い・・・
・・・たべれ・・ない、の・・・こわい・・」
身体は拒否していても、
心が拒否しているとは限らない。
僕らが治療を戸惑っている間にも
雅紀は苦しんでいたんだって思ったら、
決断を遅らせたことを悔やんだけど、
でも、雅紀が食べることを
完全に拒んでいるのではないとわかって、安心もした。
翔「・・・・そうか。
雅紀も本当は、ご飯食べたいんだもんな?」
雅「ん・・・んっ・・・」
翔「うん。
大丈夫、ちゃんと食べれるようになるよ。
ちょっと頑張ったら、
あとは俺らが元気にしてやるから。
兄ちゃんたちにまかせなさい。
・・・な?」
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年3月23日 18時
