二十四羽目 ページ29
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ゴゥゴゥと空調の音がよく聞こえる部屋に、Aは寝かされていた
先日までひいていた風邪がぶり返しさきほどから苦しそうにコンコンと咳き込んでいる
その傍らには額に浮かぶ汗を拭き甲斐甲斐しく世話をする太宰の姿があった
いつもなら何があっても眉ひとつ動かさない太宰が今は幼子のように寂しそうな不安そうな表情を浮かべている
まるで氷のように冷たいAの手を摩り少しでも温めようと試みていると、不意にノックの音が響いた
「どうぞ」
「……心配なのは分かりますがそんな目で僕を見ないでくださいよ、太宰くん」
「私が一体どんな目をしていると云うんだい?安吾」
禍々しい目をした太宰の視線の先には資料を片手に持った坂口がいた。坂口は丸メガネをくいっと上げると大きくため息をつく
(自覚無しですか………)
「今にも人を……いえ、Aくんに洗脳の異能をかけた異能力者を殺したくて仕方ないという目ですよ」
「…………こんな目をしていては、Aに嫌われてしまうかな…」
珍しく気弱な太宰の発言に坂口は虚をつかれたような表情をする。しかしすぐにほほ笑みを浮かべ大丈夫ですよと優しい声で語りかけた
「初めて会った時あんなにくっついていたのにですか?」
「それは……」
「大丈夫ですよ、A君は君が大好きですから。この前会いに行った時も彼女は君の事ばかり話していましたし」
「……そっか」
安吾の言葉を聞き安堵したのか少しだけ太宰の肩から力が抜けた
代わりにその目には熱い闘志ともとれるような力強い色が滲んでいた
それまで優しく撫でていたAの手を名残惜しそうに離すと太宰は坂口のもとへと歩み寄り無言で資料を受け取った
「さて…私もひと仕事してこようかな」
「体の原型は残しておいてくださいね、調書を残すのが大変ですから」
そう云って坂口は先程まで太宰が座っていた丸椅子に腰掛ける。体温を分けようとAの手を取ろうとしたその時太宰にこう問われた
「今日の分の仕事はもう終わったのかい?」
「いえあと少し……A君に会うために時間を作ったんですよ」
「珍しいね、仕事人間の君が」
太宰が真底驚いたような声を出す。まるで坂口は友人に無関心な人間だと言わんばかりの声音だ
思わず振り返ると太宰は坂口の手の中、つまりAの掌を凝視していた。
子供のような嫉妬から皮肉めいた言葉が出たのだろうか
その後彼は「嘘だよ、じょーだん!」と底抜けに明るい声を出して退室して行った
あの男は、僕の友人は_____心底読めない男だ
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七巳流 - 太宰さぁー〜ーーーん (2022年7月10日 16時) (レス) @page34 id: 910d5180ae (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - Юрияさん» コメントありがとうございます!期待に答えられるように頑張ります! (2019年4月29日 19時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)
Юрия(プロフ) - とても面白いです!此れからも、更新楽しみにしてます!更新、頑張ってください! (2019年3月17日 23時) (レス) id: f4565d370d (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 山吹晋助さん» 態々返信して頂いてありがとうございます。面白いお話にすることが出来ず力不足で申し訳ないです……そう言って頂けて光栄です。これからもよろしくお願いします! (2019年3月8日 19時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - ウナさん» コメントありがとう御座います。これからもよろしくお願いします! (2019年3月8日 18時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイ | 作成日時:2018年9月3日 23時