二十三羽目 ページ28
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どうしよう、どうしよう。
太宰に嫌われた?太宰に嫌われた!
認めたくないその事実だけが私の頭の中を埋め尽くす
胸がギュッと締め付けられる感じがして、何かが喉元に込み上げてくる感覚に陥る
段々と呼吸する頻度が高くそして浅くなって行き、掠れたようなヒューヒューという嫌な音へと変わってきた
酷く咳き込み、水を離れた魚のように身動きひとつ出来なくなったAは反射的に自身を守ろうと体を丸める
すると、蹲ったAを中心に地下牢の中を氷が侵食し始めた
それは次第に床を多い尽くし天井に設置された空調にまでのびて行った
やがてAの流していた涙さえも美しい水晶のように凍ってしまいカラカラと音を立てて氷の上を転がる
『ヒュッ__だ、ざ_!_カハッ__』
今にも呼吸が止まりそうだと云うのに、Aは太宰の名を必死に呼んでいた
それはもう羽を切られ助けを求めて
はたしてこれは意識の無い間にかけられた異能の効果か、初めから彼女が抱いている誰かへの執着によるものか__
苦し紛れに伸ばした彼女の手を掴む者はいない。そう思われたその時
いつからそこに居たのだろうか、彼女を見下ろす黒いナニカが彼女の頭のすぐ傍に居た
朦朧とする意識の中黒いナニカが喉元に手を伸ばしてくる
怖いはずなのに何故か抵抗しようとも思えなくて、ゆっくりと伸ばされる手をただボーッと見ていた
すると伸ばされた手が纏っていた黒い霧が晴れ、優しそうな白い手が現れた
その手に私は酷く見覚えがあって、でも思い出せなくて………
『______』
口をついてでたその言葉に黒い
いや正しくは彼女にはそう見えたと云うべきであろうか。正体不明の筈の黒い霧に覆われた人の表情の変化がなぜ分かったのだろうか
混濁した意識の中で自身の願望がそのような幻を見せたのか?………………いや、これは彼女のよく知る人なのだろう
なぜならその人はその陶器のように白い手で彼女の頭を優しく撫でたのだから。
血の気の感じられないその手は暖かく、その温もりに安心したAの呼吸は段々と落ち着いたものになった。
いつの間にか氷は侵食を止めていた
どこか霧がかっていた頭の中がスッキリして凍りそうになっていた体にも熱が戻り始める
先程までの思考はどこ吹く風Aの意識は段々と微睡んでいき
トク、トク、とゆっくりとした心音達を聞きながらAは眠りについた
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七巳流 - 太宰さぁー〜ーーーん (2022年7月10日 16時) (レス) @page34 id: 910d5180ae (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - Юрияさん» コメントありがとうございます!期待に答えられるように頑張ります! (2019年4月29日 19時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)
Юрия(プロフ) - とても面白いです!此れからも、更新楽しみにしてます!更新、頑張ってください! (2019年3月17日 23時) (レス) id: f4565d370d (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 山吹晋助さん» 態々返信して頂いてありがとうございます。面白いお話にすることが出来ず力不足で申し訳ないです……そう言って頂けて光栄です。これからもよろしくお願いします! (2019年3月8日 19時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - ウナさん» コメントありがとう御座います。これからもよろしくお願いします! (2019年3月8日 18時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイ | 作成日時:2018年9月3日 23時