第6話 ページ7
・
「ごめん、痛かっただろ？大丈夫か？」
『大丈夫です』
着くなり、光の速さで私達は手を離した。扉の前には来たものの入るつもりは無かった。
「その、付き合ってた奴いたら悪いことしたな。」
『私を好きになってくれる人なんていませんよ…』
「そ、そうなのか？わりぃな...。」
浦田先輩の発言に少し顔が赤くなった。そんな言葉、聞きたくないしむず痒い。二人の間に流れる沈黙の時間と、違いに数秒前まで繋がれてた手を互いに見つめる。
『私、帰りますね。』
とっとと帰って、一人反省会を今すぐにでもしたい。だけど、浦田先輩は帰ろうとする私の肩をそっと掴む。
「少し、部員と話していかないか？」
先輩の頼みを断れる訳もなく、部室に入り少しばかり皆と話した｡意外に楽しく、意外に皆面白かった。割と打ち解けられた時には、大分時間が経過していた。一人で変えるには、相当くない距離に家があるが怖い。
「家、近かいだろ？送るよ」
浦田先輩が気を利かせてそう聞いてきた。
『いいんですか？』
「最近、近所で刃物男が逃走してるみたいだから護衛も兼ねてね」
わざとらしいウインクに、心を打たれながらその優しさに甘えた。でも、突然携帯が鳴り始め誰かに電話をし始めた。しかも、嬉しそうな顔してる。電話の相手の声は聞こえないけど、女の子とは思いたくなかった。
長引きそうなため、先に生徒玄関で待っていた。そんな時、浦田先輩が申し訳なさそうな表情をしていた。
「すまん！一緒に帰れなくなった。｣
浦田先輩は、それだけ言うと急いで私の目の前を走り正門に向かって行った。視力が比較的良い私にその光景が焼き付いて見えた。春瀬先輩がいた。私は、そのまま冷たい床に蹲った。
暗いの嫌い。それ以上にもっと嫌いなのは、私の"大切"を奪われる事。今回の場合は、別に略奪みたいな事はされてないけど間接的に私の存在が浦田先輩の中では、優先順位が低い事が分かってしまった。嫌でもわかってしまう。
先輩にも、好きな人がいる。私の好きな人には、別の誰かを好き。君じゃなければ、良かったな。
「元気出せよ」
頭上から、聞こえる声はもう見上げなくても分かってしまう。頭を撫でながら高杉が続けて喋る。
「俺は、お前の頑張りを知ってる。これからだろ、見返すってのわ」
『うん、分かってる』
「なら、今は思う存分泣いとけ」
『……っ…うん…』
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 207人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「歌い手」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わいなり〜 - うらたさん最後イケメンすぎたんですが…感想叫びますね。高杉いいいいいいいい！付き合ってくれええええええ！！ (2019年7月26日 23時) (
レス) id: 44c20bad9a (このIDを非表示/違反報告)
えのぐ(プロフ) - コメント失礼します。前作から好きでずっと見てきました！細かいところまで表現された感情がとても素敵です！今度こそ夢主ちゃんの恋が叶うのも見てみたいので、1意見としてお願いします。これからも応援してます！ (2019年7月16日 21時) (レス) id: 659d961cb7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：薇兎ｰらぅｰ
| 作成日時：2019年7月16日 8時
