第5話 ページ6
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『だ、大丈夫です…』
差し出された手に触れられなくて、勢いよく立ち上がった。恥ずかしさと、出会えた事に脳がショート寸前だった。浦田先輩は、相変わらず笑っていた。
「久しぶり、中学以来だね。A。」
浦田先輩はそう言って、私の頭を撫でた。覚えててくれた事が嬉しかったり、浦田先輩の撫でてくれる優しい手が心地よかったりで私はその場で泣いてしまった。
『会いたかったです。浦田先輩。』
いつ、言えるか分からない好きという言葉を飲み込んで笑った。
「この涙は、再会が嬉しかったりするやつか?」
『そんな所です。』
「昔と変わんなくて、なんかすげぇー安心した。」
私も浦田先輩が変わってなくて安心した。それより、少しホラーなことが現在進行形で進んでいる。それは、部室から微かに漏れている歌声は浦田先輩のである。でも、本人は私の目の前にいる。ということは、これはどういう事だ?
『浦田先輩、今、誰が歌っているんですか?』
「恥ずかしながら、前回録音した音声を流してるんだ。女子生徒が割と群がっちゃって、色々話し合って今はこうして人を分散させて、他の場所で練習してるんだよね。」
『今は、休憩中なんですか?』
「途中までは、練習してたけどあとから顧問がさ会議に連れ出されて今は、もう練習もないよ」
その言葉を聞いて、少しの可能性がまた1つ上にあがった。先輩と一緒に帰りたい。おこがましいのは承知の上で後悔したくないから。私は、勇気を出して浦田先輩に向けて一言を声を掛けた。
『先輩、良かったら』
「あそこにいるよ!!」
「本物だっ!!!」
『えっ...。』
「あっ、やっべっ」
誘うつもりが、女子郡を誘ってしまった。数えられない程の女子群が、目の前まで走ってきて浦田先輩は咄嗟に私の手を握る。
「今は、我慢して」
『…はっ、はい!』
急すぎて、声が裏返った。走りながら私は空いてる片方の手で口元を隠した。恥ずかしい。浦田先輩に聞こえてないといいのだけど。強引に引かれる右手は、熱くなった。好きです、先輩。でも、貴方は…私に……。
渡り廊下を走り、第2の軽音部室に来た。
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わいなり〜 - うらたさん最後イケメンすぎたんですが…感想叫びますね。高杉いいいいいいいい!付き合ってくれええええええ!! (2019年7月26日 23時) (レス) id: 44c20bad9a (このIDを非表示/違反報告)
えのぐ(プロフ) - コメント失礼します。前作から好きでずっと見てきました!細かいところまで表現された感情がとても素敵です!今度こそ夢主ちゃんの恋が叶うのも見てみたいので、1意見としてお願いします。これからも応援してます! (2019年7月16日 21時) (レス) id: 659d961cb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:薇兎ーらぅー | 作成日時:2019年7月16日 8時