【文スト】ただ、みんなを支える為だけに (ページ17)

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十六ページ17

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「…通してください」

芥「…断る。首領の命令だ」

あの後、中也幹部に逃がしてもらって出口に向かっていた。
その途中の廊下で芥川さんと遭遇してしまい、このような状況になった。

遭遇した時、昔みたいに優しい声で私の名前を呼んだ芥川さん。

でも、それはすぐに敵対する顔へと変わって、少し胸が痛んだ。
…私も、今は探偵社。
しっかりしないと…。

芥「お前がどうしても此処から出ると云うなら、力尽くで引き止める」

「…それなら、私も力尽くで此処を通ります」

芥川さんの外套が、黒獣へと変わるのを見て、また胸が痛んだ。

私は、それを表情に出さないようにして、云い返した。

「『源氏物語【蛍】』っ…！」

唯一の攻撃できる私の能力。
人を殺した事はない。

でも、人を攻撃した事はある。

みんなを守る為に。

芥「『羅生門【顎】』！」

「っ…！」

芥川さんからの攻撃を飛んで躱す。
夢浮橋で、身体能力は上がってるから、身体は軽い。

それにしても、芥川さん、本気だ。

もうその目には、敵としての私しか映っていなかった。

そして、再び黒獣が襲いかかる。
私も攻撃しないと戻れない…！

「っ、はァッ…！」

芥「っ！」

芥川さんの羅生門は、誰よりも見てきたから分かる。
空間断絶はずっとは使えない。

だから私はひたすら炎を芥川さんに向けて放つ。

そして、空間断絶が消えたその時、隙ができたのを見計らって炎を放った。

少し、標的をずらして。

その炎は、芥川さんの右脇腹を掠った。

芥「っ…！熱い…っ、ゴホッ」

「っ…すみません」

芥「！」

私は芥川のうなじに手刀を入れて、芥川さんを気絶させた。

…私が芥川さんに勝つなんてありえない。
これはまぐれ。

芥川さんの目には、まだ……ちゃんと私が映ってた。

空間断絶を止めた後、攻撃の準備ができていたのに、芥川さんはほんの少し、一瞬だけ黒獣を止めた。
その隙を突いただけ。

そのちょっとした優しさが、嬉しかった。
正直言ってこのまま芥川さんを置いていくのは嫌だ。

だからせめて、怪我を治す…。

「『源氏物語【輝く日の宮】』」

そう唱えると、芥川さんの身体の周りにオーラが纏ったように光る。
そして、私の身体も同じように光り、しばらくするとその光は消え、私の右脇腹が焼けるように熱くなる。

「っ…、早く、帰ろう」

私は最後に、芥川さんに「すみません」と云い、出口に向かった。

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