5話 ページ7
.
「待て」
逃げようとした敦を捕まえる国木田
敦は焦ったように声を張り上げる
「む、無理だ!奴____奴に人が敵うわけがない!」
その口振りはどうやら人喰い虎のことを知っているようだった
その様子だと、被害者か?
でも、虎からこの少年が逃げ切れるとはとても思わない
もしかしたら、彼含めて数人が孤児院から追い出されていた場合、彼と一緒に追い出されていた人間が喰われたか…
でも、それだと敦が逃げ切れていることがもっとわからなくなる
それに、今のところ虎が人間を殺したという情報を知らない
彼女が担当している事件ではないので、情報が足りていない可能性もあるが…
そんなことを考えていると、国木田が敦を床に叩きつける音が聞こえた気がした
床を見てみると、敦が国木田に拘束されていた
「茶漬け代は腕一本かもしくは凡て話すかだな」
暴力的な情報収集をする国木田の周りにそれを物珍しそうに見る人が寄る
そんな状況を見て彼女と太宰が立ち上がった
「まあまあ国木田君。君がやると情報収集が尋問になる。社長にいつも云われてるじゃないか」
「このままだと国木田さんが加害者になってしまいますよ…すみません、ちょっとしたトラブルが発生してしまっただけですので、どうかお気になさらず」
この言葉も何回言っただろうか
彼女は思ってもいない言葉を吐く
とても慣れているのだ。この状況に
良くも悪くも、探偵社はトラブルを招くことも多い
だから、愛想の良い私が謝ることも多い
でも、たまにネットの掲示板で「未成年に謝らせてるってどうなの?」「そもそも未成年を二人もあんな危険な処で働かせているっておかしくない?」なんてことを書き込んでいる人をよく見る
この中に探偵社をよく思っていない人がいるのだとしたら、また書き込まれるのだろうか
そんなことを考えていると国木田が見物客を追い払っていた
「それで?」
太宰が敦に情報を求める
敦は渋々といった様子で答えた
「うちの孤児院はあの虎にぶっ壊されたんです。畑も荒らされ、倉も吹き飛ばされて____死人こそ出なかったけど、貧乏孤児院がそれで立ち行かなくなって口減しに追い出された」
それはなんとも可哀想な話だ
見物客も失せ、彼女は敦の話に耳を傾けていた
.
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ