42話 ページ44
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でも、いつかはその演技も剥がれる
探偵社も中也も知らないAの素顔
それが剥がれた時に受け入れられるのはどちらか
紅葉は探偵社はきっと彼女を罵るだろう、と予想した
「…この人を捕まえてどうするの?」
「Aはマフィアにするのじゃ。お主と同じ、闇に生きるべき乙女。諜報や暗殺、もしかしたら参謀にもなれるかもしれんのう」
紅葉はマフィアとして活躍する彼女を想像する
こちらの方が才能を生き生きと使える
それがこの娘の幸せであると紅葉は近い未来にそうなる彼女を想像し、笑った
「……」
でも鏡花は違った
彼女はその才能に従うことが必ず幸せではないことを知っているから
探偵社で演じているということは、彼女はきっとそれを知られて軽蔑されることを恐れているから
探偵社の様子を撮った写真は、どんな写真よりも生き生きとしていた
少し幼さも含む探偵社での笑顔はとても綺麗だった
「愛しの鏡花、この娘はきっとお主と仲良くなれる」
嬉しそうに話す紅葉に、鏡花がただ頷くだけだった
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「ねえ、Aちゃん」
「なんですか?」
喫茶店から探偵社への帰り
太宰はAに話しかけた
「…期限のない、私からの宿題、聞いてくれる?」
「なんですか?」
太宰はAの肩を抱き寄せる
「一つ、絶対に君自身が手を汚す事はしないで。マフィアなんて、絶対やめて」
「それを破る事は金輪際無いですけど」
「二つ、いつか君の秘密全て教えて」
太宰のその言葉にAは酷く傷付いたような苦しんでいるような表情をする
「私は君の力になりたいのだよ。いつか君自身が望まぬ道を歩むことにならないように…そして最後、君の秘密を探偵社の皆にも話すこと」
Aは首を振る
太宰は、自分の欲で知りたいのもあったが、大事な人に対する心配の気持ちでそんなことを云った
「私達は君のことを軽蔑しない。いつか云えるまで____私達はそれまで待つよ」
その言葉にAは顔を上げた
「…私、云わないかもしれない」
「君が話せるようになるまで待つ。心配してるのだよ?国木田君だって最近は君が休めるようにと仕事を減らしてる。」
Aは少しだけ悩んだ後、自分の、“本当”の笑顔を見せた
「いつか、ですよ」
幼いその笑顔は、初めて彼女の仮面が完璧に剥がれた瞬間だった
彼女は太宰に手を引かれ帰った
勿論、自分の唯一無二の居場所____探偵社に
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