40話 ページ42
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「…失礼しました」
「結構慌ててたねぇ。たまには休まないと駄目だよ」
「充分に動けているので結構です」
Aは太宰の奢りの珈琲を飲む
カフェインが入っている珈琲は結構飲んでいることも多い
徹夜や夜更かしをよくするからだ
それでも綺麗な肌を保ってるし、社内では元気を保ってるし、
誰も彼女の無理には気付かない
「別に化粧なんてしなくても良いのに。少し心配はするけど特に嫌な印象をもったりはしない」
「お母様の顔に泥を塗る様な行為だけはしたくないので」
「うふふ…ねえAちゃん」
太宰は笑顔でAを見つめる
其処には何かを含んでいる様だった
「私はね、君のその顔を崩したくて崩したくて堪らないのだよ…」
「…はあ」
「君のその演技を崩してやりたい。そしてその深淵にある“人間らしい”君を見てみたい」
太宰は机から身を乗り出してAの頬を触る
とてもスベスベな肌
「君にとって予想できないことでもしたら君は焦りを露わにしてくれるかい?それとも驚きを露わにしてくれるのかい?怒り?喜び?」
「…何を云って」
「私が君の両親がした借金を返してあげる、と云ったら君はどんな反応をするのだろうね…別に、私はマフィア時代で稼いでたから、充分な貯金はあるのだよ。その金くらい返せる」
Aの瞳が揺らぐ
太宰はこの表情を見たかったようだ
「私は、君に“無償で”金を渡す。君は私に借りができるわけではない。君にとっては良いことしかないだろう」
だから、早く頷け、と太宰は視線で急かす
Aは迷っていた
ここで本気でそれを云っているのなら、彼に返して貰ったほうが…良くない
Aは首を振った
「拒否します」
「おや、なんで?」
「確かに、一時的にそれで解決するかもしれないですが、お母様もお父様も更にお金を借り、それ以上の額に行ってしまうかもしれません」
「でも、君が今すぐ返せる訳ではないのだよ…君が早く返さないと、どうなるんだろうね?借りた本人は親なのだろう?なら……次狙われるのは親の命と体、だよ。君の身柄だってどうなるかわからない」
「…社内の人間にその様なことで頼らせてもらうのは少し気が引けます。家族のことなので家族内で完結させてください」
太宰はガッカリしていた
彼女の“仮面”を剥がせなかったと
剥がせたのは、一瞬だけだった
彼らはその後探偵社に戻った
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