39 (二階堂くん) ページ39
朝の光に目を覚ましても、身体がダルくてなかなか起き上がることがでなかった。
通夜も告別式も、ほとんど千賀が仕切ってくれた。俺はただそこにいるだけの役立たずな喪主だったけど、千賀とAがいてくれたから、何とか役目を果たすことができた。
じいちゃんを見送ったと思ったら、今日はAがこの家を出て行く。
Aは落ち着くまでここにいたいと言ったけど、俺がそれを拒んだ。
だって、きりがないから。
君を好きになってしまった以上、もうここに君を置いておくことはできない。
俺は強くないから・・
いつか、この気持ちを君にぶつけてしまうかもしれない。
それがすごく怖いんだ。
いつも通り着替えて、いつも通り顔を洗う。
いつも通り、Aが作った朝食を食べて、いつも通り食器を下げた。
いつも通りを意識している時点でいつも通りなんかじゃなくて、二人の間に流れる空気は少し重い。
「・・何時だっけ、北山さん来る時間」
"10時"
「・・俺、仕事してる時間だから、そのまま帰って？わざわざ呼びに来なくていいから」
"・・・はい"
寂しそうにAは頷く。
俺のこの頑なさを、Aはすでに諦めているみたいだった。
「・・・じゃあ、仕事行くわ。まだ、記憶は戻ってないし、大変だと思うけど頑張れよ？・・あと、ありがとな。じいちゃんのこと。やっぱ一人じゃきつかったから」
Aの顔を見ずに、一気にそう言った。
「じゃあな」
背中を向ける俺の腕を、Aが掴む。
なかなか振り返ることのできない、弱虫な俺。
「・・・・が・・・と・・・」
「え？」
微かに聞こえた声に、驚きを隠せない。
思わず振り返った先には、必死に声を出そうとするAがいた。
「・・あ・・・あ・・・
掌をぎゅっと握りしめて、唇を震わせている。
「・・・あ・・・と・・
「A・・・・わかったから。もういいから」
たまらずAの肩を掴む俺に、Aは両目に涙をためてイヤイヤをする。
「・・・あ・・・・が・・・・・と・・・
必死に、俺だけを見て、俺だけに伝えようとしている言葉。
辛そうな姿に目を背けたくなるけど、ちゃんと真正面から受け止めようと決めた。
「・・あ・・・り・・・が・・・・と」
かすれて聞き取りにくい小さな声を、俺はとても綺麗だと思った。
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れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (
レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね！私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました！大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです！ (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね！うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです！ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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