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何となく変だと思っていた。
いつもは私一人で診察室に行くのに、今日は二階堂さんも一緒だったから。
「おはよ」
"おはようございます"
二階堂さんの隣に座って、千賀さんと向かい合う。
「今日は、桃ちゃんに、大切な話があります」
"・・・・はい"
「君が誰なのか、ようやくわかったんだ」
"え?"
「君の恋人だという人が現れて、君の話をしてくれた」
思わず二階堂さんの顔を見ると、彼は何も言わずに一度だけ頷いた。
「君は、望月Aさん。25歳で、両親と一緒に、喫茶店をやっています」
・・・・A
私は、望月A
「心当たり、ある?」
"わからない"
「そう。・・・ニカとも話したんだけど、今日からはその名前で君のことを呼ぼうと思います。それが、君の本当の名前だから」
"・・・はい"
「それで、身元もわかったし、本来ならそこに帰るべきなんだけど、何にも思い出せていない今、Aちゃん的にはどうなのかな?と思ってる。君の恋人も、君の選択を優先してくれるみたい。ご両親のもとに帰るのか、それとも気持ちが落ち着くまで、ニカの家にいるのか」
思わず、二階堂さんの腕を掴んだ。
「どうした?」
二階堂さんは驚いたように、私の顔を覗きこむ。
だって・・・・すごく怖い。
二階堂さんの側を離れると、真っ暗な広野に投げ出されてしまいそうで、灯りのない部屋に閉じ込められてしまいそうで、二階堂さんの腕を離すことができなかった。
「いるだろ?」
二階堂さんが、私の右手に、温かい掌を重ねてくれた。
「俺、お前の隣にちゃんといるよ?」
真っ暗な広野に、光が射す。
真っ暗な部屋に、灯りがともる。
二階堂さんは、光だ。
何もない私を暖めてくれる、唯一の光。
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れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね!私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました!大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです! (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね!うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです! (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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