14 (千賀くん) ページ14
町内会の集まりの帰りだと言って、おじいちゃんがフラっと俺の病院に現れた。
「午後から休診ですよ。どうやって入ってくんの？いつも」
「俺くらいになれば顔パスよ」
「警備の人、変えてもらおうかな」
「バカボン」
「健永」
「お前、今日暇か？暇ならうちに来い。団子買ってきたから」
「なかむら屋の？」
「おう」
「行く！・・・あ、そう言えば桃ちゃんは？いつもおじいちゃんと一緒なのに」
外に出るときは、いつもおじいちゃんかニカと一緒の桃ちゃんが、今日は見当たらない。
「俺が用事あったから、一人で公園で団子食べてきなって言ったんだ」
「大丈夫？一人で」
「徐々になれなきゃなんねーだろ。いつまでも誰かの後ろにくっついてるわけにはいかないんだから」
「ニカに怒られない？桃ちゃんに対して、少し過保護なとこあるから」
俺の言葉に、おじいちゃんは笑う。
「あいつは桃ちゃんに、自分を重ね合わせてんのかもな」
「え？」
「高嗣の両親は、あいつが産まれてすぐに事故で死んだだろ？3年前にばあさんも死んで、次は・・俺。いつか一人になっちまうんだって、心のどこかで怯えてる。だから、一人ぼっちの桃ちゃんを、あいつはほっとけないんだよ」
「・・おじいちゃん」
「桃ちゃんも可哀想だけど、高嗣も可哀想だよな。あいつは、産まれた時から、ずーっと可哀想だ」
おじいちゃんはそう言って、小さく溜め息をついた。
「健永」
「何？」
「お前は、全然可哀想じゃないな！」
「何それ」
「父ちゃんも母ちゃんもいい人で、こーーんなでっけー病院があって」
「人を能天気扱いしないでください」
「それがいいんじゃねーか！」
「え？」
「一点の曇りもなく、辛気くさい陰もない。お前は、太陽みたいだ」
「・・・そんなこと言っても、何も出ないよ？」
「高嗣のこと、よろしくな」
『なーんてな』って言って、おじいちゃんは立ち上がる。
いつもと様子の違うおじいちゃんに、心がざわつく。
「おじいちゃん！」
「なんつー顔してんだ、バカボン」
カラカラとおじいちゃんは笑う。
俺は、どんな顔をしてるんだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 786人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (
レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね！私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました！大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです！ (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね！うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです！ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
