13 (北山くん) ページ13
それは、とても小さな公園だった。
小さな公園だから、すぐにわかった。
お前、何してんだよ。
どんだけ心配したと思ってんだ。
・・・ほら、帰るぞ。
そう言って、今すぐ連れて帰りたい。
だけど目の前の俺の恋人は、俺のことなんて何にも覚えていないんだと、興信所の人は言っていた。
「こんにちは」
彼女が座っているベンチの前に立って、そう話しかけた。
顔を上げたAは、不思議そうに俺を見て、小さく会釈をする。
顔色ひとつ変えないで、
初めて会ったみたいな顔をして、
・・・・・本当に君は、俺のことを、全部忘れてしまったんだね。
「・・あ、隣いいですか?この公園、ここしかベンチなくて。昼メシ、食ってなくて・・」
コンビニの袋を揺らす俺に、Aは荷物をどかして、スペースを半分あけてくれる。
「・・ありがとうございます」
"どうぞ"
「・・・え?」
Aは口を動かしているのに、彼女の声が、全然聞こえない。
「・・・声・・でないの?」
Aは困ったような顔をして、"はい"って頷いた。
「病院は?!」
大声を出す俺に、Aは身体をびくつかせる。
「・・・あ、ごめん。・・・すいません、本当」
精神科に通ってるって、興信所の人、言ってたな。
記憶だけじゃなくて、声まで・・
ねぇ、君に何があったの?
何で俺は知らないの?
どうして君を、守ることができなかったんだろう。
俺の目の前に、ハンカチが差し出される。
「え?」
"涙"
Aが俺の目元にハンカチを当てて、俺は初めて、自分が泣いていることに気づいた。
"大丈夫ですか?"
心配そうに俺の顔を覗きこむAに、やっぱり涙は止まらなかった。
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れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね!私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました!大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです! (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね!うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです! (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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