6 (北山くん) ページ6
警察から帰る車の中で、Aの両親も俺も、みんなぐったりと疲れていた。
Aは多分、自分の意思で姿を消した。
成人していて、しかも事件性がない場合、警察が動いてくれることはない。
頼みの綱が、一気に切れたような、そんな感覚に陥っていた。
「・・・北山さん、ごめんなさいね」
Aのお母さんが、力なく呟く。
「何でお母さんが謝るんですか。まだ、いなくなって1日ですよ?ふらーって帰ってきますよ。近いうち」
自分自身に、言い聞かせていた。
Aがいなくなった。
それも、自分の意思で。
そんな現実を、到底受け入れられそうにはなかった。
「・・・やっぱり、悩んでたのかしら」
「え?」
「北山さんとのお付き合い。うちみたいに小さな喫茶店の娘が、あなたみたいな大きな会社の息子さんと、釣り合うわけないもの」
「北山さんの前で言うことじゃないだろ!」
お母さんをお父さんが嗜めて、お母さんははっとしたように、「ごめんなさい」って頭を下げた。
「気にしないでください」
偶然立ち寄った、家族3人でやっている小さな喫茶店で、俺はAに一目惚れした。
何度も何度も何度も通いつめて、何度も何度も何度も、交際を申し込んだ。
最後は、俺の粘り勝ちだったと思う。
あの時、Aは困ったような顔をして、『負けました』って笑ったんだ。
「見つけます。俺が、絶対」
ハンドルを握る手に、更に力を込めた。
最後に見たAは、どんな表情をしていただろう。
全然思い出せなくて、そんな自分に愕然とする。
見上げた赤信号が、ぼんやりと滲んだ。
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れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね!私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました!大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです! (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね!うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです! (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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