検索窓
今日:4 hit、昨日:9 hit、合計:307,154 hit

6 (北山くん) ページ6

警察から帰る車の中で、Aの両親も俺も、みんなぐったりと疲れていた。




Aは多分、自分の意思で姿を消した。




成人していて、しかも事件性がない場合、警察が動いてくれることはない。




頼みの綱が、一気に切れたような、そんな感覚に陥っていた。






「・・・北山さん、ごめんなさいね」





Aのお母さんが、力なく呟く。





「何でお母さんが謝るんですか。まだ、いなくなって1日ですよ?ふらーって帰ってきますよ。近いうち」







自分自身に、言い聞かせていた。







Aがいなくなった。






それも、自分の意思で。







そんな現実を、到底受け入れられそうにはなかった。








「・・・やっぱり、悩んでたのかしら」





「え?」






「北山さんとのお付き合い。うちみたいに小さな喫茶店の娘が、あなたみたいな大きな会社の息子さんと、釣り合うわけないもの」





「北山さんの前で言うことじゃないだろ!」





お母さんをお父さんが嗜めて、お母さんははっとしたように、「ごめんなさい」って頭を下げた。





「気にしないでください」






偶然立ち寄った、家族3人でやっている小さな喫茶店で、俺はAに一目惚れした。






何度も何度も何度も通いつめて、何度も何度も何度も、交際を申し込んだ。






最後は、俺の粘り勝ちだったと思う。






あの時、Aは困ったような顔をして、『負けました』って笑ったんだ。






「見つけます。俺が、絶対」






ハンドルを握る手に、更に力を込めた。






最後に見たAは、どんな表情をしていただろう。






全然思い出せなくて、そんな自分に愕然とする。





見上げた赤信号が、ぼんやりと滲んだ。

7 (二階堂くん)→←5 (北山くん)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (564 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
786人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね!私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました!大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです! (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね!うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです! (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年3月8日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。