7 (二階堂くん) ページ7
生活に必用なものを買いそろえて家に帰りついた頃、辺りはもう薄暗くなっていた。
「疲れたね」
俺の言葉に、桃は頷く。
「晩ごはん、どうしようか。出前でも取る?」
冷蔵庫に貼っているメニュー表を取ろうとした時、桃が俺の手を掴んだ。
"私が作ります"
「え?作れるの?」
"作れる"
「・・・じゃあ、頼むわ」
嬉しそうに頷いた桃は、さっそく冷蔵庫を開けて、中身を物色しはじめた。
何だか手慣れている。
桃は、誰かの奥さんだったのかもしれないし、ただの料理好きの女の子なのかもしれない。
答えは、誰も知らない。
桃にも、その答えはわからない。
「久しぶりにまともなメシにありつけるのか」
いつの間にか、背後にじいちゃんが立っていた。
「真後ろに立つなって!びっくりすんだろ!」
「桃ちゃんにちゃんとしたもの買ってあげたのか?」
「ちゃんとしたものかはわからないけど、好きなの買わせた」
「金使う相手なんかいないんだから、桃ちゃんにいいもの着せてやれよ?」
「余計なお世話だよ!」
じいちゃんは、悪い顔をして笑うと、冷蔵庫からビールを取り出す。
桃が作っている料理を見て、小さくガッツポーズしたのを、俺は見逃さなかった。
愛すべき、くそじじい。
俺の、たった一人の家族。
「なんだ。人の顔をジーっと見て。気持ちの悪い」
「孫に気持ち悪いって言うなよ。・・・あのさ、じいちゃん」
「ん?」
「桃、大きな病院で診てもらうべきだよな?今日一日、ずっと考えてて。うちの病院じゃ、設備が・・・。だけど、桃は保険証も持ってないし嫌だって言うんだ」
じいちゃんはしばらく考えた後、思い付いたように俺を見上げた。
「バカボンがいるじゃねーか」
「あ!」
バカボン。
近くの大病院の金持ち息子を、じいちゃんは皮肉を込めて、バカボンと呼んでいる。
俺と同い年で、幼馴染みでもあり、親友でもある。
「バカボン呼べ。俺が頼んでやる」
じいちゃんに言われて、俺は携帯を手に取った。
話を聞いていた桃は、不安そうに眉をハの字に寄せている。
「大丈夫だよ」
そう言った俺の声は、自分でも驚くほど優しかった。
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れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね!私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました!大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです! (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね!うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです! (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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