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「もうユリに付きまとうのはやめてくれ!」



通りの向こうの路地裏で、サトシが兄弟に頭を下げていた。



「あ?なんだコイツ」
「兄ちゃん、コイツ、幼稚園にいたユリのストーカーだろ」
「あぁ…そんな奴いたような気がする〜
 で?要件は何?」



蘭はニヤリと笑いかける。



「ユリの優しさに漬け込むのはやめてくれ!」
「は?」
「頼む!お願いだ」



のらりくらりと蘭は答える。



「ユリは優しくねぇよなぁ竜胆?
 アイツはすぐ怒るし、意外とワガママだし…
 あ、お前の前ではそうじゃねぇのかもなぁ?」



「テメェ…」



サトシは殴りかかろうとしたが、
いとも簡単に止められ、逆に胸倉をつかまれた。



「お坊ちゃまが無理してしゃしゃり出てくんじゃねぇよ」
「殴れよ…お前らはそれしか能がないんだろ?」
「あ?」



軽く数発殴ったところで、ユリが現れた。



―――――――――――――――――――――――――――――――



ユリは2人が暴力を振るう瞬間を初めて見たのだった。



「なぁユリ、なんかコイツがイチャモンつけてきてさぁ〜」
「ねぇちゃんから離れろって言うんだよ?」



2人はつい先ほどまで人を殴っていたとは思えない、
可愛らしい顔をして、
晩ご飯何にする?と、いつもの調子で聞いてくる。



けれど、目の前で血を流すサトシを見捨ることは、
ユリにはできなかった。



「…立てる?」



呻きながらも立ち上がるサトシに肩を貸し、
ユリは兄弟に言った。



「ゴメン…今日は帰るね」



「「は?」」



理解できない、という風に、兄弟はユリの後ろ姿を見送った。

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作者名:あたそ | 作成日時:2023年3月20日 23時

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