▼第7部 溺愛 ページ32
元々蘭と竜胆が住んでいたマンションの、
最上階のフロア全てを買い取って、2人はセーフハウスにしていた。
部屋は既に、ユリの好きそうな家具でコーディネートしてある。
「どう？ねぇちゃんこういうの好きだろ？」
と、竜胆が誇らしげに言う。
「うん…ステキなお部屋…
だけど、私…ここで何をすればいいの？」
「なんもしんなくていーの」
と、蘭がユリの頭を撫でながら言う。
「でも…」
「俺ら1か月休みもらったからさぁ、
しばらくはずっと一緒にいようなぁ」
「私…ここから出ちゃダメ…なの？」
ふわりと蘭が抱きしめる。
「ユリはさぁ…俺のこと好き？」
「うん…」
「だったら俺のお願い、聞いてくれるよなぁ？」
「うん…」
「俺、ず〜っと昔から、
お前のこと独り占めしたくてたまんなかったの。
だから、ユリも俺のことだけ考えて？
俺と一緒になら、たまには外にも連れてってやるよ」
「でも…蘭ちゃんがお仕事の日は？」
「寂しい？」
「う…ん」
ユリが見上げると、蘭が恍惚とした表情をしていた。
「そっかぁ〜寂しいかぁ〜
じゃあ、もう仕事は辞めっかな〜」
「おい兄ちゃん、俺がいること忘れてねぇ？」
竜胆が呆れた目で2人を見ていた。
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それからの1ヵ月、会えなかった期間を埋めるように、
3人は子どもの頃のように、朝から夜まで一緒に過ごした。
夜眠る時には、蘭と竜胆の間でひと悶着あったが、
週に1日、3人で川の字で寝ることで落ち着いた。
ただ…楽しい時間とは早く過ぎるもので、
九井から「いい加減仕事しろ」という連絡の頻度が増えてきていた。
川の字で寝るために、枕を3つ並べようとしているユリに、
蘭は意を決して言った。
「俺ら…明日からは流石に仕事行かなきゃなんだけど…」
「え…
あでも、お仕事しなきゃ、生活費とかあるよね…」
「いやいや、金はもう腐るほどあっから！」
「そうなの…？」
「寂しくねぇ？」
「寂しいけど…でも、待ってるから」
寂しいくせに、それでも健気に笑うユリに、
蘭は変なスイッチが入った。
「え…なに？今日は3人で寝る日でしょ！？」
「お前はそれでもいーの？」
「…ヤダ」
「だよな」
ニヤッと笑って、蘭はユリを自分の部屋へ抱いていった。
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作者名：あたそ | 作成日時：2023年3月20日 23時
