- 朱桜司と独奏曲/第二話 ページ2
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その、彼女の口から出る「できると思う」というその言葉は、なぜか自分を凄く安心させてくれて。何度も何度も、その言葉に励まされた。確か、今年の春頃だっただろうか。それを凛月先輩に伝えた時、凛月先輩は優しく笑みをこぼして、嬉しそうにしていたことを、よく覚えている。
「アマちゃんの言葉は、無敵だからねぇ…」
「無敵、」
「魔法みたいに、一瞬でそっか、って納得できちゃうの。どんなに辛くて、苦しい時も。アマちゃんの言葉1つでみんな笑顔になれちゃうんだぁ…」
俺たち『Knights』の誇る、ほんものの『騎士』だよ。
その時の凛月先輩は、嬉しそうだったけれど、どこか寂しげな雰囲気を纏っていた。
その意味が知りたくて尋ねた時。先輩方は、苦笑いをして話を変えるだけで、自分の問いには誰も答えてくれなかった。何度も尋ねたけれど、その問いに誰も触れることはなく、ただ何事もなかったように他のことを始めていく。それが仲間外れにされているように感じてしまったが、きっとそれは、先輩方なりの護り方だったと今なら感じられている。
彼女の過去を、自分だけがまだ、知らない。瀬名先輩も、凛月先輩も、鳴上先輩も知る彼女の姿を、自分だけが知らない。知ることで何が変わってしまうのか分からないけれど、そこには知られたくない何かがある。
ただ知っているのは、彼女と同じ舞台に立ちたいといういつか願った希望を叶えることは、簡単なではないということ。
けれどただ、知りたいと思った。知らなければ何も変わらないから。何も、進めないから。DDD後の『Knights』を1番支えてくれたのは、と聞かれたら、私たちは直ぐに彼女だと答えるだろう。恥ずかしながら先輩方にぶつかり続けていた私と、どこまでもストイックな瀬名先輩との仲を取り持ってくれて、ゆっくりと時間をかけて、『Knights』の雰囲気を和らげてくれた。
たった半年、されど半年。ステージには立たずとも、自分の目指す『アイドル』に近い何かを持つ彼女と過ごした日々。同じ『Knights』というユニットではなければきっと関わることもなかっただろう彼女との出会いが、偶然だったとは思わない。きっとそれは必然な出会いだったと信じている。先輩方との出会いも、彼女との出会いも。
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作者名：ラビット_ | 作成日時：2023年7月28日 10時
