- もしも願いが叶うなら/第二話 ページ16
.
お師さんの、斎宮の人形として動いていたあの頃、笑って話しかけてくれたあの女の子がおれも影片も大好きだった。斎宮もなんだかんだ言ってあの子のことも大切にしていて、少なくともAといる時だけは、おれは笑えていた。人形としてではなく、人間として。彼女と同じ、アイドルとして笑えていた。
人形だったあの頃全てが悲しくて寂しい思い出にならなかったのは、あの子の影響が大きい。
「___……！……ちゃんっ！……に〜ちゃん！」
「うにゅ！？にゃ、にゃんら！？」
「に〜ちゃんが何回も呼んでも反応してくれなかったんだぜ〜……」
「あぁ……ごめんな、ちょっと考えごとしてたんら」
そう言い苦笑いをすれば、顔を見合わせて頷いた3人が、おれの前に立つ。なんだこれ、と首を傾げれば、深呼吸をした友ちんが口を開いた。
「に〜ちゃんは、その人に会いたいって言ってましたよね？」
「うん、そうだけど……おれ今あの子に会って、どうすればいいかわかんないんだ。何したらいいか、わかんない。……って、こんなの今は関係無いことだよな、ごめん…」
これは、おれが片付けるべきなのに。
そう言って、苦笑した。おれ自身が、どうにかしないといけない事なのに。後輩たちにまで心配かけてしまった。しっかりしなきゃな、と頬を叩くと、真っ直ぐとおれの目を見た創ちんが、あのっ、と声を出した。
「っに〜ちゃん！」
「ん？なんだ〜？創ちん」
「……僕は、わからなくても、会いたいなら会えば良いと思うんですっ、」
「でも、」
そう、思わず声が漏れて、その先が詰まる。いつも静かな創ちんが出した声は、柔らかな普段と違い、強い明確な思いが込められていて、自然とおれの心にすとんと落ちてくる。友ちんと光ちんが驚いたように創ちんに視線を向けてから、おれを見て頷く。
でも、の後に続けようとしたのは、今おれが会っても、何も出来ないということ。それでも創ちんの言うように、会いたいなら、会えばいい。会ってその先どうするか、なんて考えなくてもいいのか、ということに今さら気付いたことに苦笑がこぼれた。
気付くの遅すぎだな、おれ。
なんでそんなことにも気付かずに今まで引き伸ばしてきたんだ、なんて言えば、目の前にいる可愛い後輩である3人は笑う。どうやら小さくて、自分が護ってあげないといけない、と思っていた3羽のうさぎは、おれに進む先を示してくれたらしい。
.
- もしも願いが叶うなら/第三話→←- もしも願いが叶うなら/第一話
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 202人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ラビット_(プロフ) - オンナさん» 展開にわくわく…！凄く嬉しいです、ありがとうございます！続編でもよろしくお願い致します🙏 (7月18日 5時) (
レス) id: bc77977d93 (このIDを非表示/違反報告)
ラビット_(プロフ) - とわさん» そう言って頂けて嬉しいです😊🌟続編でもよろしくお願い致します🙏 (7月18日 1時) (レス) id: bc77977d93 (このIDを非表示/違反報告)
オンナ(プロフ) - とても面白くてこれからの展開にワクワクしています。続編楽しみです！ (7月17日 9時) (レス) @page49 id: dee2fbc24a (このIDを非表示/違反報告)
とわ(プロフ) - めっちゃ面白いです！頑張ってください！更新待ってます。 (7月10日 22時) (レス) @page47 id: ac6daa7edc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らびまる | 作成日時：2023年3月29日 8時
