ろく ページ9
*
飲み込まれる、ペースに。
「理鶯が充分でも、わたしがお礼したいの!いいからわたしの言うこと聞いて」
「…ははっ。そうだな。そこまで言うならそのお礼とやらを有り難くもらうとするか」
わたしの言うことはすべて肯定する。
わたしが待て、と言えば大人しく待つ。
わたしが嫌だと言えば、やめる。
だから、
「ふふ、それでいいの。ちゃんと考えておいてね、行くところ」
この距離感が、丁度いいんだと思う。
「Aはどういうところによく出掛けるんだ?」
機嫌をよくしたわたしを察したのか優しい笑みを向けながらそう問いかける理鶯に、そうだなあ、と首を傾げた。
「友達と遊ぶにしてもやることは様々だしなあ。…あ、ひとりで出掛けるときは洋服見に行くかな」
そういえば最近、服買ってなかったかも。
新作も見たいな。
「じゃあ、そうしよう」
「へ?」
「貴殿が着る服を小官も一緒に見たい」
ああ、飲み込まれる。
くらりと揺れる。だめだ、これは。
「…それお礼になる?」
「Aが楽しんでるところを見ると小官も満たされる」
冗談みたいなことを本気の顔で言ってくるから、この人は死ぬほどタチが悪い。
どうせ自覚してないんだろうけど。だから余計に。
「……やはり、それは厳しいだろうか」
そういう少ししょんぼりした顔も、ぜんぶ、無意識からなってるものだってわかってる。
計算なんてしていないって、分かってる。
だからこそ、どうしても放って置けない。
「…厳しいなんて、言ってない。それで理鶯が満足するならいいよ」
わたしの返答に理鶯は嬉しそうに笑った。
「…ああ、ありがとう」
計算じゃない笑みに見えたそれは、わたしは、理鶯という『男』に油断していた。
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LOKO - ずっと探してました!素晴らしい作品をありがとうございます (2021年6月12日 13時) (レス) id: 2cf4de4ba9 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - すごく面白かったです。甘々で、凄く好きな作品でした!もう更新はしないのでしょうか?とても好きになってしまった作品なので少し悲しいです。待ってます。 (2019年9月3日 7時) (レス) id: 1bc282c048 (このIDを非表示/違反報告)
涙香 - まずありがとうございます!!←理鶯は天然だけど何処か色気があって雄みがあるんですよね…!!それが匠の様に表現されていて本当に悶えました←本当にこの作品大好きです…! (2018年11月26日 1時) (レス) id: b0edcd9996 (このIDを非表示/違反報告)
タピオカ(プロフ) - 理鶯って天然って云うか鈍感なところあって、いいですよね!更新頑張ってください (2018年7月17日 2時) (レス) id: df53b8b7ae (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 最高です……( ゚∀゚)・;’.、グハッ!! (2018年6月27日 9時) (レス) id: d9386c92f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いさ | 作成日時:2018年6月14日 19時