未来を信じている ページ6
「そう言うと思ったわ。君もAも、こういう人生に関わる大事なことは慎重に考える子よね。二人の間のことなんだから、私が口を出しちゃ悪いわね」
教官は微笑んで、自分に言い聞かせるように言った。
「恋人になるかどうかも、君たち二人が納得する答えを出せばいいわ。私が言ったことは、余計なおせっかいだから」
教官は再び箸を持ち、南瓜の煮物を食べ始めた。
「……すみません、お母様」
口をついて出てきたのは、謝罪の言葉だった。
「いいのよ、気にしないで。ほら、食べて食べて」
笑顔で気丈に振る舞ってくれているが、俺には教官の気持ちがわかっていた。
教官の本音は、きっと本人が言った通り、今すぐにでも俺たちを結ばせたいのだろう。Aには……あまり時間が残されていないかもしれないから。
あいつが大変な運命に巻き込まれる前に、あいつに幸せになってもらいたい。普通の女としての幸せの代表、結婚を経験させてあげたい。そう思ってのことだろう。
俺もそう思わないことはない。あいつがいなくなってしまったら、もう遅い。結婚はおろか、恋人同士にもなれない。当然のことだ。
でも俺は、焦ってはいけないと思っている。未来の不安を抱えながらする結婚に、本当の幸せは見つけられるのか。落ち着いて考えるべきだ。
それに、まだAがいなくなると確定したわけではない。俺はまだ未来を信じている。予知夢通りにさせるものか。俺がAを守ってやる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夕食を終えた後、俺は先に風呂に入ることにした。明日に備えて、疲れは十二分に取っておかなければならない。ゆっくりと湯船に浸かりながら、明日のことについて考えていた。
風呂を出ると、何やらリビングの方が騒がしい。妙な予感がする。
リビングに戻ってくると、妙な予感はこれだったのか、と確認する間もないまま、教官に絡まれた。そう、教官が酔っぱらっていたのである。
「ちょっと、落ち着いてくださいよ、教官……って、一体何本開けてるんですか!?」
「いやぁ、たったの16本よ〜?」
『たったの』の使い方を大いに間違っている気がする。350mlの缶ビール16本は相当だろ……。しかもこの短時間で。
「アランくんも飲めばいいじゃない? Aもよく付き合ってくれたわよ〜」
そう言って満面の笑みで勧めてくるが、ここで俺が飲んだら収拾がつかない。
「教官、それで最後にしてください。身体に悪いですって」
なだめるのも一苦労だ。
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2018年9月29日 14時