音に身を委ねて ページ45
「皆さん、大変長らくお待たせしました!」
司会のピエールがステージに上がり、観客の歓声を浴びる。この歓声、私たちのパフォーマンスが終わった時にはもっと大きくなっているといいな。
「ただいまより二次審査を開始いたします! 一番目はパフォーマーA! 張り切っていきましょう!」
弾き出されたかのように、私たちはステージへの階段を駆け上がった。眩しい照明に照らされ、ステージ中央へ。
音楽が流れ始める。イメージ通り、音に身を委ねて表現する。最初はのびやかに。手先まで神経を研ぎ澄まして。
アステは上手、ディッフェは下手へじわじわと移動する。お互いに位置についたことを確認しあい、向かい合う。
「ディッフェ、いわなだれ! アステ、かえんほうしゃ!」
ステージと観客席との間にかえんほうしゃの赤い光に照らされた岩の滝が出来上がる。その轟音が合図だったかのように、曲の雰囲気がガラリと変わる。勇ましくも、優しい雰囲気。アステはくるくる回りながら、ディッフェはときおり殻の中に入り、勢いよく滑ったりと緩急をつけながら、ステージ中央に戻ってくる。
二人が中央に戻ってくると、再び音楽が展開する。強くリズムを刻む低音。強くステップを踏み、足音を会場内に高く響かせる。
「ディッフェ、からにこもる! アステ、Vジェネレート!」
ディッフェは殻にこもってスピンし、アステがそこにVジェネレートをぶつける。火の粉が華麗に会場内に飛び散り、明るく照らす。その火の粉をくぐり抜けながら、私がディッフェの近くに向かう。
「アステ、私とディッフェにねんりき!」
ここからが見せ場だ。アステが私とディッフェをねんりきで宙に浮かせ、殻から出たディッフェと私は空中で手を取ってくっついたり、離れたりしながら観客席の方へ飛んでいく。歓声が一気に湧き上がる。ポケリウムを振ってくれている人に手を振ったり、一回転をしてみせたりして、歓声に応える。
「ディッフェ、アンコール!」
ここでディッフェが観客席に向かってアンコールを掛ける。そのおかげもあって、より大きな歓声が上がる。心地よい歓声に包まれながら、アステの待つステージまで戻る。
ディッフェと共に華麗な着地を決めた私は、アステに目配せをした。ここからはアステの見せ場だと。アステはそれに気づいて、小さくうなずいた。
私とディッフェはアステの後ろに下がり、アステだけにスポットライトが当たるようにする。
「アステ、炎と舞って!」
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2018年9月29日 14時