勝負前のからかい ページ43
「短時間でそんなに元気になるなんて……。いや、ライバルとしては望ましい限りよ。競い甲斐があるわ」
スピカはちょっと驚きながらも、目を笑わせて私の肩をぽんと叩いた。
「で、あたしのステージ、どうだった？」
メイク直しのために鏡の前に座ったスピカが問いかけたとき、私の心臓が飛び跳ねたように動いた。
「あ〜……それがね？」
申し訳なさを感じながら、寝過ごしたことを説明すると、スピカは一度不満げな顔を見せたものの、仕方なさそうに肩をすくめてうなずいた。
「まあそっか。あれだけ不調そうだったのはあたしにもわかってるから、寝過ごしたのは許してあげる」
「その代わり」と、スピカは私に顔をぐいっと近づけて、その美しい瞳の奥の輝きを見せつけた。
「二次審査では全力を出すこと。ちゃんとその元気な状態でステージに立って、元気なままで帰ってくること。いいね？」
そうじゃないと、スピカだけじゃなくて、ファンのみんなにも申し訳ない。その気持ちをはっきり言葉にした。
「うん。絶対ね」
二次審査までの待ち時間、私はスピカから、スピカの一次審査の様子を聞いていた。
彼女は今まで輝きの洞窟にいたため、鉱石などを見る目が鍛えられていたらしく、一瞬で正解の石を見抜いたらしい。ただ、それは感覚的なものだから、しっかりニャスパーのねんりきで確認したという。
そのあとニャスパーとユキワラシのりんしょうで、石の耐久性をチェック。びくともしなかった石を選んで、見事正解。二体のりんしょうの綺麗さに観客席が沸いたらしい。そりゃあ1位になるわけだ。
「と、もう二次審査の順番発表ね」
一通り話し終わると、スピカはモニターに目を向け、私たちの顔写真がシャッフルされ、並んでいく映像演出を眺めた。
「あ、A、またトップバッターだよ。これで三回連続？」
スピカがモニターを指差しながら、首を傾げる。
「今まで気にしてなかったけど、確かにそうかも。一番に縁があるのかな」
「何か仕組んでるんじゃないの〜？」と冷やかすスピカを軽くあしらい、私はモニターに目を向ける。
「スピカは二番目……私の次だね」
「ええ、ますます燃えるわ。順番はあなたの次だけど、結果はあなたの上になるわ。覚悟しておきなさい！」
スピカがそんなことを言うから、こちらとしても言い返したくなる。
「覚悟するのはそっちだよ。ステージが終わっても、今度は泣くの我慢してよね！」
「ちょっ、そんな大声で言わないで！」
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作者名：頂志桜 | 作成日時：2018年9月29日 14時
