直前の打ち合わせ ページ37
【A視点】
荷物を持ってフェスト病院を急いで飛び出し、ツドキの背に乗って最速でセキタイタウンにたどり着いた。
セキタイには、私と同じようにトライポカロンに参加するであろうと思われる少女の姿がちらほら。町の中央、シンボルであるだろう巨石の手前に簡易的なステージが作られている。その脇にある本部のような建物に、少女たちは吸い込まれていく。出場手続きをしに行くのだろうか。
ホロキャスターの時計だと、開催まであと40分はある。しかし、今回はぶっつけ本番だから、手続きせずにここにいたって何の得もない。先に参加手続きを済ませることにした。
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参加手続きが終わると、いつものように参加者控室に入った。ちらほらと、これまでの大会で目にしたことがあるパフォーマーの姿があった。ゲリラ開催だというのに、みんなさすがだなぁ。
もはや慣れてきた着替えとメイク、そしてアステとディッフェのコーディネートをささっと済ませ、二次審査のことをおおまかに打ち合わせする。
「まず、アステがこう動いて、それに対してディッフェがこう動く。それで……」
目の前に置いてあったペーパーナプキンの束から一枚を取り出し、そこにさっき見たステージの全形を描き、動きを書き込む。アステとディッフェはそれを真剣に見て覚える。
「たぶん、アステとディッフェがこの位置に来たとき、音楽の雰囲気が優しめに変わるから、そこからこの位置に来るまではあまり激しい動きはしないように。それで……」
私の頭の中ではもうどんなステージにするかは決まっている。脳内で音楽が再生され、それに合わせて華麗に舞う私たちの映像がはっきりと見えているのだ。
「動きはざっとこんな感じかな。出す技は本番になって口頭で言うから、よく聞いててね。大丈夫、普段のバトルのときと同じ声の大きさで言うから」
そう言ってアステとディッフェの方に目を向けると、二人は真剣そうに書き込まれたペーパーナプキンを見つめていた。この短時間で詰め込もうとしているのだ。
「まあ、もし動きを間違えても、臨機応変に対応するから大丈夫だよ。これはゲリラ開催だし、そういうのも楽しまないと!」
そう、楽しむのが一番なんだ。見に来てくれたみんなを楽しませるのには、パフォーマーである私たちが楽しんでいないと成り立たない。
「ずいぶんお気楽ね、A」
そんな私に声をかける少女がいた。癖のある強気な声。この声は……。
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2018年9月29日 14時