助けた理由 ページ28
「Aさんを助けたのは、Aさんが……妹に似ていたからなんです」
ミリップさんは呟くようにそう言った。
「妹さんに、私が?」
「はい。だから、他人事に思えなくて」
照れ臭そうに私を見るミリップさん。その目に映っているのは、私か、それとも妹さんなのか。
「素敵なお兄さんですね。優しくて、思いやりがあって」
キリナお姉ちゃんみたいな人だ。言いながらそう感じていた。優しくて、素敵なお兄さんとお姉ちゃん。
私の言葉に、ミリップさんはうれしそうに、でもどこか哀しそうに控えめにうなずいた。
「本当に、助けていただきありがとうございます。ミリップさんがいなかったら、私今ごろ野生のポケモンに襲われて致命傷負っているところでしたよ」
改めて私がお礼を言い、頭を下げると、ミリップさんも改まった表情になった。
「いえ、僕は僕にできることをしただけですから。それに、妹を助けられたみたいで、ちょっと安心しているんです」
ミリップさんがその言葉通り、安心しているような自然な微笑みを見せてくれた。妹さんのことが本当に大切なんだろうな。
「あ、一つ訊いていいですか? 私、いつまでここにいることになるのかわかります? 体感的にはもう大丈夫なんですけれど、入院とかになっていたらスケジュールが……」
シャラジムに挑戦してからセキタイで行われるとうわさされているトライポカロンに出場しようと思っていたが、長い時間ここにいるのなら、セキタイに先に行った方がいいのかもしれない。
「本当に異常がないのなら……大抵の検査の結果は正常だったらしいので、念のためあと一日、ここで休養を取ってもらえれば大丈夫みたいです。倒れたのは疲労と睡眠不足のせいだろうとのことで」
前にここに来たときとほぼ同じ。あと一日の休養をとるのは、二回目故か。ということは、私の目は……?
「変なことを訊きますけれど、私の目って赤くなってたりしますか?」
ミリップさんはちょっと驚いたように、
「いえ、綺麗な緑色をしていますよ」
と答えてくれた。目の色の変化が私に何をもたらすのかはまだよくわかっていないけれど、緑色だったら安心だろう。
「すみません、僕、そろそろ行かないと。Aさん、お大事に」
「はい。いろいろ、ありがとうございました」
ミリップさんは時計を気にしながら病室を出ていった。次の予定があるのだろう。
それにしても、これからどうしようかなぁ。あと一日、ここから動けないもんなぁ……。
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2018年9月29日 14時