いきなりの遭遇 ページ11
【アラン視点】
俺は真っ先に中央のエレベーターに向かった。
プリムの話だと、実験場はこの地下にある。このエレベーターが直接実験場まで繋がっているかはわからないが、階数表示的に地下に下がってくれるみたいだ。まずは地下に行こう。
と思ったが、エレベーターを動かすにはキーが必要なようだ。探すしかないのか。
諦めてワープパネルの方に向かおうかと思ったが、そのとき、エレベーターの階数表示が動いたのを俺の目が捉えた。
階数表示が地下4階から徐々に数字が若くなってくる。エレベーターがこちらに向かっているのだ。
誰かが、エレベーターに乗っている。それは恐らく、俺の敵だ。
隠れてやり過ごすのが波風を立てずに侵入するいい方法だとはわかっているが、俺はエレベーターの真ん前に立ったまま動かなかった。「俺は謀反を起こす」と正々堂々宣戦布告したかった。
エレベーターの階数表示が止まる。この階に止まった。扉が開くまでの数秒間、俺はぐっと両手を握りしめ、目を鋭くさせてそれを睨んでいた。
しかし、その扉が開いた瞬間、俺は目を見開かざるを得なかった。
「代表……」
まさか、まさかとは思ったが、いきなりこの人に遭遇するとは……。
エレベーターの中のその人も一瞬だけ驚きの顔を見せた。
「アランか……」
すぐに身構えたが、どうやら代表が俺を排除しようとする気はないようだ。それどころか、エレベーターの中から出てくる気配すらない。
代表は真顔のまま、俺をじっと見ている。
「……乗らないのか？ 待っていたのだろう？」
ふと見ると、代表の右手はずっとエレベーターの『開』ボタンを押していた。
妙に親切なのが気になるが、渡りに船の状況だ。迷いながらもエレベーター内に足を踏み入れた。
代表は『開』ボタンから手を離し、『B4』のボタンを押した。それでもまだ降りる気配はない。
「あなたこそ、ここで降りなくていいのですか？」
「……お前が来たとなれば、話は別だ」
エレベーターの扉が、ゆっくりと閉まった。
狭い閉鎖空間の中、俺と代表は対角線上に立ち、互いになるべく視線を合わせないようにしていた。気まずい空気が満ちる。
そして、エレベーターが動き始めた。体が軽くなった錯覚に陥るが、心は重かった。
「どうして俺を助けるようなことを……？ 俺は、もう……あなた側の人間ではないのに」
どうしても気になったその疑問をぶつけると、代表はふっと苦笑した。そして、少し間を置いてそれに答えた。
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作者名：頂志桜 | 作成日時：2018年9月29日 14時
