雨乞い ページ19
私はあのあと、てるてる坊主を作って逆さに吊しておいた。
小学生の頃はよくこうやっていろいろ天気を変えようと試みたものだ。
ただ、今回違うのは自分の想いだった。
どうかもう一度、涼雨に会いたい。
ただそれだけだった。
私はもう一つ、丁寧に書いた手紙をてるてる坊主と一緒に吊した。
“お天道様、お願いします。どうか雨を降らせて下さい。涼雨に、会いたいです。”
たったそれだけだった。
自分の願いはただそれほどに単純だったのだ。
だが、単純な願いを思い続けられる程に、私はそれだけを強く求めていたのだろう。
その夜、私は窓の前の自分の勉強机の椅子に座り、ずっと空を眺めていた。
半分ほど窓を開け、暗く、目では分かりづらい、硝子を一枚隔てた向こうの世界の空気を何となく、肌で感じていた。
時折入り込んでくるうっすらと冷たい風に肌を撫でられ、一つ身震いしたが、自分のベットから毛布を一枚持ってくると、それに包まりまた窓の外を眺めた。
何時からだろうか。
緩やかに迫る眠気に押され、いつの間にか眠りに落ちていた。
気がつくと外は幾らか明るくなり、夜明けの頃かと顔を上げると、広い空をすっぽりと覆うような雲。
慌てて時間を確認すれば7時18分だった。
すっかり夜は明けている。
窓と網戸を一気に開け放ち、身を乗り出して大気に触れると、うっすら香ってきたのはあの、雨の前の土の香りだった。
まだ降っていない。
でも、この少し重苦しい様な空気には覚えがあった。
階段を駆け降り、朝食を急いで胃の中に入れると着替えて直ぐに私は家を飛び出した。
あの、涼雨の傘を持って。
息を切らしながら走って走って……。
途中、止まりかけたときにポツポツと降り出した雨にまた、背を押されるようにして走る。
やっとの思いでたどり着いた公園。
止まることなく私は屋根の下、ベンチの所へと駆ける。
屋根の下に飛び込んだ眼前にあったのは、希望とは違う、静まり返った空間だった。
｢駄目、かぁ｣
ぜえぜえと呼吸をしながらも、悲しみでどうしようもなく込み上げた言葉。
雨に濡れたからか、それとももっと別の、心の問題か、途端に悪寒がした。
勢いでその場に崩れ落ちそうになったとき、
｢A、危ないっ！｣
待ち侘びた声と、温かさに触れた。
振り返らずとも溢れ出してくる涙。
｢涼雨っ……会いたかったっ！｣
｢ありがとう、A｣
私の想いは、彼に、お天道様に、届いたのだ。
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くるみ(プロフ) - MIZOREさん» はじめまして！コメント&応援ありがとうございます。これからも二人でいろんなお話を出していけたらと思ってますので、よろしくお願いします。 (2017年9月13日 18時) (
レス) id: 1b7b0b02d0 (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE - 暁さん、くるみさん、はじめまして!とても感動できる内容で、読みやすかったです。更新頑張ってください! (2017年9月13日 18時) (レス) id: a68bb744ad (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - 星月夜さん» 心あたたまるコメントをありがとうございます！今後も頑張って二人で更新していこうと思うので、この作品をよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ (2017年9月11日 7時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
星月夜 - 短編集なので当たり前なのですが、一つ一つが簡潔に書かれているので読みやすいです！最初のお話は本当に感動しました！ (2017年9月10日 23時) (レス) id: b0ad28a90c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くるみ＆暁 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年9月10日 12時
