雨乞い ページ18
次の日、学校に行く途中であの公園を覗いたが、やっぱり涼雨は居ない。
でも、雨の日なら、という涼雨の言葉で私は何となく、次の雨を楽しみに思っていたのだった。
｢どうしたのさ、A。最近元気無いじゃん｣
私が友人にそう言われたのは、あの雨の日から一月と少し経った頃だった。
あれから何度か雨が降り、その度にあの公園へ通ったのだが、まだ会えていない。
｢何かあったの？相談に乗るよ｣
｢ううん、何でもないよ。ただ……｣
｢ただ？｣
｢あの人は、元気にやってるかなって｣
｢あの人？｣
しまった。
あの日涼雨に会ったあと、何だかふわふわした、不思議な違和感があったから、涼雨の事は誰にも話していなかったのに。
｢ちょっとした知り合いだよっ、あの、引っ越しちゃってさ……｣
｢そっかぁ。住所とか知らないの？手紙でも書いてみたらいいんじゃない｣
住所。
そういえば、涼雨はどこに住んで居るのだろう。
このあたりの人何だろうか。
それとも“誰か”との待ち合わせのために何処かから来たのか……。
たった１度会っただけだから当たり前だが、私は全く涼雨の事を知らないのだと感じた。
そして、きっと私は涼雨の事をもっと知りたいと思っているということも。
｢……そうだね。そうするよ｣
｢うん。んじゃ、あたしは帰るわ｣
｢うん、バイバイ｣
｢また明日っ！｣
元気に駆けていく彼女の後ろ姿に何だか憧れた。
……今の私とは違って、楽しそうだったから、だろうか。
家に帰るとテレビを付けて、天気予報を眺める。
ここ一ヶ月、毎日の日課だ。
残念ながら晴れマークである太陽の絵が並んでいるのと共に、天気を伝えるお姉さんの淡々とした声が流れていた。
ここ一週間以上はずっとこんな感じの天気だ。
｢あ〜あ、毎日雨じゃぁ、嫌になっちゃう。……か。あの時の自分とは、今は真逆だね｣
自分の部屋のベットに寝転びながら呟く。
あの時の自分は、未来の自分がこんなに雨を恋しく思っているとは思いもしないのだろう。
｢手紙……ねぇ。住所は分からないから……そうだ！雨に届けてもらえばっ！｣
我ながら、子供っぽくてメルヘンチックな考えだってことはわかってる。
それでも、試してみたい。
叶って欲しい。
その願いのままに、私は動き出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「短編集」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くるみ(プロフ) - MIZOREさん» はじめまして！コメント&応援ありがとうございます。これからも二人でいろんなお話を出していけたらと思ってますので、よろしくお願いします。 (2017年9月13日 18時) (
レス) id: 1b7b0b02d0 (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE - 暁さん、くるみさん、はじめまして!とても感動できる内容で、読みやすかったです。更新頑張ってください! (2017年9月13日 18時) (レス) id: a68bb744ad (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - 星月夜さん» 心あたたまるコメントをありがとうございます！今後も頑張って二人で更新していこうと思うので、この作品をよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ (2017年9月11日 7時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
星月夜 - 短編集なので当たり前なのですが、一つ一つが簡潔に書かれているので読みやすいです！最初のお話は本当に感動しました！ (2017年9月10日 23時) (レス) id: b0ad28a90c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くるみ＆暁 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年9月10日 12時
