儚く散る恋なんて、絶対にしない ページ16
『はい』
「……なんだこれ」
『さぁ？』
「石に、砂、変な海藻やら食えない貝まで…よく集めたな」
『だから、知らないって言ったのに…』
この人間は文句ばかり。これでも頑張って選んだ方なのに。
(どれもこれも綺麗な色や形で、美味しいはずだと思ったのに…)
人間って面倒くさい。
そういえば、人間に発生別が二種類に分かれるんだったな。こいつはどっちだ？
『ねぇ、貴方胸がないわ』
「男だからな…」
『細くて筋肉質で、綺麗だけど可愛くない』
「ありがとさん」
ムッとした。いかにも棒読みだし、褒めてないのに。
その日から数日間、この男と過ごすことになった。
言われたとおりの食事を持ってくれば、喜んでくれるし、この男の話は面白い。
アンジェ様といる時よりずっと楽しかった。
もちろん、一定の距離をあけて危険が迫っても大丈夫なようにはしている。
心配することなんて何もない。
男は日に日に元気になり、とうとう動き出した。
もう、世話をする必要もない。
『体、良くなってよかったわ』
「…そうだな。もうすぐここを離れられそうだ」
『……そっか』
この男の近くにいすぎたせいだ。こんなにも寂しく感じるのは。
この胸に湧き上がる感情は何？
離れたくない……
一緒にいたい、もっと……ずっと…
一目見た時から、目を奪われて話せなくなってしまった。
全部全部、コイツのせいだ。
「A？何泣いてんだよ」
『…人魚はね、ダメなの。この感情に気づいちゃ。きっと、すぐに消えてしまう』
この場にいるのが辛くて、自ら海の中へと逃げてしまった。
男に「さようなら」とだけ告げて。
恋をすれば消える。
消えたくないから、儚く散る恋なんて絶対にしないつもりだった。
月が昇った頃、海面にもう一度出てきた。
でももう彼はいない。
だって、ここは海の真ん中。彼のいる場所のはるか遠く。
帰りたい。私も。
アンジェ様に謝りたい。
俺を思い出すだけで涙が出てくる。同時に体も消え始める。
生まれて初めて恋をした。相手を想うだけで消えてしまう、残酷な恋。
アンジェ様、ごめんなさい。私はあなたの言うことを聞かなかったばかりに消えてしまいます。
でも、後悔はしてません。
私が海の上で知ったのは、美しいだけの世界だったから。
でもね、知りたくないことまで知ってしまったの。
儚く消えてしまうなら、知らなきゃよかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「短編集」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くるみ(プロフ) - MIZOREさん» はじめまして！コメント&応援ありがとうございます。これからも二人でいろんなお話を出していけたらと思ってますので、よろしくお願いします。 (2017年9月13日 18時) (
レス) id: 1b7b0b02d0 (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE - 暁さん、くるみさん、はじめまして!とても感動できる内容で、読みやすかったです。更新頑張ってください! (2017年9月13日 18時) (レス) id: a68bb744ad (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - 星月夜さん» 心あたたまるコメントをありがとうございます！今後も頑張って二人で更新していこうと思うので、この作品をよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ (2017年9月11日 7時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
星月夜 - 短編集なので当たり前なのですが、一つ一つが簡潔に書かれているので読みやすいです！最初のお話は本当に感動しました！ (2017年9月10日 23時) (レス) id: b0ad28a90c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くるみ＆暁 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年9月10日 12時
