契約の証 ページ12
｢当たり前だけど、あまり、何も変わらないのね｣
｢何がだ？｣
｢なんかこう、見え方とか、感じ方とか。昨日の事が、一瞬の出来事だった気がする｣
｢だが、契約は変わらない。証があるからな｣
｢証？｣
絲がそっと近づいてきた。
すっと指差したその先は、昨日熱を持っていた所。
チラリと服の下を覗くと見えたのは、はっきりとした朱色で描かれた花の絵だった。
｢これが、契約の証……？｣
｢ああ、それと……｣
絲は私の手を取ると、甲に口づけた。
｢これで、俺は主のものだ｣
少しの沈黙。
途端、熱くなる顔。
……絲の、笑い声。
｢ちょっと！そんなの聞いてないっ！｣
｢……やはり、主と過ごすのは愉しそうだ｣
にやりと笑う絲は今まで見た中で何より愉しそうで、表情が豊かで、不思議な気持ちだった。
｢ねえ、絲。なんで私と契約してくれたの？｣
｢言っただろう？愉しそうだから、と｣
｢それだけ？｣
｢それだけだ｣
そう言うと、絲はふわっと姿を消した。
あの香りを残して。
｢絲め、逃げたな｣
絲が言わないなら、私も言ってやるものかと、続きは心の中へとしまい込んだ。
本当の思い。
私はあなたに、恋をした。
あなたと別れるのが怖かった。
一生、会えないなんて。
あなたには、そんな思いはないのだろう。
きっと愉しそうだと思っただけの、ただの気まぐれ。
それでも、私はあなたが振り向いてくれるまで、諦めやしない。
私に絶対、振り向かせてやるのだから。
我が主。
主を持ったのなんて初めてだ。
だが、彼女の所に居るのは面白そうだ。
あやかしにとって100年なんてあっという間に過ぎてしまう。
それを苦だと思ったのは初めてで。
ずっと続いて欲しいと願うこの時を、大切に、大切に過ごそう。
いつか、俺が主を手に入れるために。
私たちが
俺達が
共にあるために願おう
絲を
Aを
手に入れる事を
とある町にある神社の巫女。
彼女は強い神通力を持っていると噂されている。
彼女には、彼女にしか見えない世界があると。
そして彼女の後には何時も、爽やかでほんのり甘い、不思議な香が残っていると――
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「短編集」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くるみ(プロフ) - MIZOREさん» はじめまして！コメント&応援ありがとうございます。これからも二人でいろんなお話を出していけたらと思ってますので、よろしくお願いします。 (2017年9月13日 18時) (
レス) id: 1b7b0b02d0 (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE - 暁さん、くるみさん、はじめまして!とても感動できる内容で、読みやすかったです。更新頑張ってください! (2017年9月13日 18時) (レス) id: a68bb744ad (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - 星月夜さん» 心あたたまるコメントをありがとうございます！今後も頑張って二人で更新していこうと思うので、この作品をよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ (2017年9月11日 7時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
星月夜 - 短編集なので当たり前なのですが、一つ一つが簡潔に書かれているので読みやすいです！最初のお話は本当に感動しました！ (2017年9月10日 23時) (レス) id: b0ad28a90c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くるみ＆暁 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年9月10日 12時
